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「ん……」


『…ていうかわたし、臭くない?大丈夫?』


「全然…。気になるなら、帰ってうちで風呂に入ろう。胡蝶から、君は目さえ覚めれば他に異常はないと聞いている」




言えばすぐに帰してくれるだろう、と杏寿郎が言う。つまり今日から煉獄家にお世話になるってことか。なんだか緊張してきた。
失礼のないように気を付けないと。杏寿郎に頼んで身なりは整えさせてもらいたいな…と考えていると、不意に彼の顔が間近に迫った。




『ちょ、ストップ!』


「…何故拒むんだ。二日も我慢したというのに」


『これこそお風呂入った後にさせて!二日も入ってないんだから!』


「むう……俺なら気にしな」


『わたしが気にするの!』


「むう………」




アオイちゃんに言って口をゆすぐくらいのことはさせてもらったし、体も拭かせてもらったけど、やっぱりちゃんとお風呂には入りたい。そして諸々のことはその後にしてほしい。
むくれている杏寿郎の肩を押し返して引きはがす。好きな人のことなら気にならない気持ちは大いに分かるけど、好きな人だからこそ気にするんだって。

ていうかそれより早く帰って、私達は今後のことをいろいろ話さないと。




「…そうだな。あまり呑気にしていられないのは事実だ」


『相談もできるだけ早い方がいい。皆にも考えてもらって、意見たくさん貰いたいから』




まだ杏寿郎は私のことを含めて何も話していないと言っていた。私と一緒に決めたかったんだそうだ。
全てを一気に話しても混乱するだけかもしれないし、誰にどの程度まで話すかも決めなくてはならない。それにたとえ“柱”である彼が話したとしてもすぐに信じてもらえるような内容じゃないから、どうやったら信頼を得られるかも考えないといけない。そもそもこの世界がそのままそっくり漫画通りに進むのかどうかも分からないんだけども。
一旦、杏寿郎の家で作戦会議をするのが無難か。


やらなきゃいけないことは山積みだけど、「今後」のことを彼と前向きに考えられることが嬉しかった。
こっちに来たことで失ったものはたくさんある。でも、その代わりに彼との未来を手に入れられる可能性を得た。
失ったものを悲しむよりも、今はそれだけを考えていたい。




『…杏寿郎』


「ん?どうした?」


『杏寿郎、“ここにいる間だけでいいから恋人になって”って、前にわたしに言ったよね。
今度はわたしからお願いしてもいい?…わたしのこと、これからも恋人にしてくれる?』


「…!」




――もう戻れないから、“期間限定”じゃなくて、“一生”ね。


私の言葉に太陽みたいに明るく笑った杏寿郎は、力強く頷いて「勿論」と言ってくれた。






の夢を、君と共に


(この先も、ずっと)




END.






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