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杏寿郎が鴉で連絡を取ってくれて、蝶屋敷にて炭治郎くんと話が出来ることになった。




『変なとこない?』


「うむ、君はいつでも可愛い!」


『そうじゃなくて……』




慣れない着物を着て、慣れない化粧品を使って身支度を整える。ものすごく気合いを入れてオシャレをするわけではないけど、せめてこの世界にいても浮かないくらいの格好でいたい。
簪を着けてから杏寿郎の元へ戻って確認を取ったが、思ってたのと違う答えが返ってきて思わず突っ込んでしまった。

本当はしのぶさんあたりに詳しく教えてもらいたいんだけど、事情を話していない段階で聞くのはやっぱり躊躇いがある。全部話した後なら開き直れるけども。
その“全部話すことになる”かどうかが、この後の炭治郎くんとの会議で決まるわけだ。


杏寿郎に連れられて、昨日までお邪魔させてもらっていた蝶屋敷に再びお邪魔した。




「明華さん、身体の具合は大丈夫ですか?」


『はい、おかげさまで。本当にありがとうございます』


「いえいえ、何かあったら言ってくださいね。
それでは炭治郎くんを呼んでくるので、部屋で待っていてください。煉獄さんはどうされます?」


「俺は終わるまで外で待っていようと思う。俺がいると気になって話しづらいだろうからな」




案内をしてくれるしのぶさんの後ろで、「一応まだ会わない方が良いかもしれないから」と杏寿郎が小声で言った。
本来なら杏寿郎と炭治郎くんが話すことになるのは無限列車内だから、確かに避けられるなら避けておくべきかもしれない。余計な接触をすることによって何が起こるか分からないし。

何かあった時だけ呼ぶという約束をして、私一人で用意された部屋に入った。




「あのー、失礼します……?」


『!』




二人で話が出来ればいい、とだけ伝えて用意してもらった部屋は小さめの個室だった。ひとつだけベッドがあるので、一人用の病室なのだろう。
壁際に置いてあった椅子を自分用と炭治郎くん用に並べて待っていると、ノックの音とともによく知っている人物が顔を出す。




「えっと、俺に用事があるって聞いたんですが……。すみません、どこかでお会いしましたか?」


『あ、ううん、初めてです!ごめんなさい、急に呼び出して』




入ってきた炭治郎くんは患者衣だった。やはり今は、那田蜘蛛山の直後あたりなのだろうか。

私からしたら全然初めて見る人ではないのだけど、炭治郎くんからしたら私は名前も顔も知らない赤の他人。はじめまして、で挨拶は間違っていない。芸能人に初めて会いに行ったのと同じ感覚。
見る限り目立った傷はなさそうだけど、訓練をしていて疲れている可能性はある。なるべく手短に済ませよう、と心の中で決めた。




「それで、用事というのは…?」


『えっと…ちょっと、炭治郎くんに聞きたいことがあって。
多分凄い唐突な質問ばっかりするし、嫌なことも思い出させちゃうと思うから……そこだけ先に謝っておくね。ごめんなさい』




聞き取り調査みたいな流れになると思うけど、炭治郎くんにとってあまり良い思い出ではないこともたくさん聞くことになると思う。この物語の都合上、良いことや楽しいことよりも嫌なことや苦しいことの方が多く起こるから。

まだ何のことかよく分かってないであろう彼が、「大丈夫ですよ」と首を傾げながら頷く。まあ、そう言うしかないよね。






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