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人の言葉を話す鴉が、高い空へと消えていく。
お館様と一通り話し終えた後、彼は柱を緊急招集すると言って鴉を呼んだ。いわゆる“柱合会議”というものが今から突如開かれることになったのだ。
産屋敷邸まで来られたことだけでも想定外だったのに、今日でここまで話が進むのか。とんとん拍子で進んでいく状況に冷や汗と緊張が収まらない。
やっと落ち着いてきたと思った心臓がまたバクバクと鳴り出して、ただその場で縮こまっていることしかできなかった。
「柱の皆のことはよく知っているだろう?そんなに構えなくても大丈夫だ!」
『いや、知ってるのと対面するのとじゃ訳が違うから……』
「うーむ……そうだな、不死川や宇髄が荒っぽくて心配か?
常に俺が隣にいる、滅多なことはさせない。それでも怖ければ俺の背に隠れていると良い!」
『…それを言うと杏寿郎も“斬首する!”とか言ってたから、荒っぽい類だと思うけど』
「うっ……すまない、あれは単なる俺の知識不足で…」
『ふふ、冗談冗談』
お館様から「ここで待っていてくれるかな」と言われた部屋で、杏寿郎と二人並んで待機。お茶菓子まで用意してもらって、これから柱合会議でなければもう少し心穏やかでいられたと思う。
杏寿郎と話していると緊張が和らぐ瞬間もあるけど、今からあの柱達が集合するかと思うと肩の力が抜けきらない。お館様と話すだけでも十分緊張したのに、さらに人数が増えるのだ。杏寿郎がいるから大抵のことは大丈夫だと思うけど、うっかり変な言い回しをして不死川さんとか伊黒さんとかに怒られたらどうしよう。怖すぎる。
ドキドキしながら杏寿郎と話していると、ガタンと物音がして扉の方から複数人の気配がした。
「こんにちは〜!…あら、煉獄さんが一番乗り?」
「うむ!俺は用があってしばらく前から居たぞ!!」
「急遽の柱合会議という割に、あまり深刻そうではなかったが……題目は何だ?」
「俺も内容は聞いてねーな。ま、悪い話ではなさそうじゃね?」
『(一方的に知ってる方々がこんなに……!!)』
「蜜璃ちゃん」から始まり、よく見知った面々が次々と部屋へ入ってくる。
“柱”って普段はどこにいるのか知らないけど、やはりお館様に何かあったときのためにそんなに離れた場所にはいないのだろうか。いくら足が速いとはいえ、お館様が鴉を飛ばしてからまだ30分も経ってないような。…いや、こっちの人間じゃ考えられない距離ではあるんだろうけども。
最初に到着した組からやや遅れて「不死川さん」と「義勇さん」が合流し、最後に「悲鳴嶼さん」がお館様と一緒に入ってきて、“柱”のメンバーが一堂に会した。
『(えっ……あれ、そういえばわたしってこっち側!?)』
「さて皆、集まってもらってすまないね。急ぎで聞いてもらいたい話があるんだ」
「うむ!よろしく頼む!!」
「なんだァ?今日は煉獄が取り仕切るのか?」
柱達がドヤドヤと部屋に上がり込んでくる様に圧倒されて呆けていたが、ふと彼らが自分とは向かい合わせの位置に座っていたことに気付く。最後に娘さんと共にゆっくり入ってきたお館様だけが、私や杏寿郎と同じ並びに座っていた。もしかしなくても私、この会議ではお館様側なの?
確かにこれからする話の中心にはなると思うけど、座る位置はここで良いのだろうか。もっと横にズレたところでも良いのだけど。柱でも何でもないのに一番偉い人と同じ位置にいて、なんだかとても申し訳ない。
小さくなっていると、「宇髄さん」から「ところでそちらのお嬢さんは?」と声が掛かったのでびくりとした。
「ああ、この子は名を中藤明華という!俺の嫁だ!!」
『は、はじめまして…』
「あ〜!! 噂で聞いてたぜ!! 煉獄が突然嫁連れてきたって!!」
「えっ!? えっ!? そうなの!? 私初耳!! 詳しく知りたーい!!」
「明華さんとお話したい気持ちは分かりますが、本題が終わってからにしましょうね。お館様、本日の議題を教えていただけますでしょうか」
「そうだね。今日話したいのはまさにその杏寿郎のお嫁さんのことなのだけど……まずは先日の出来事について、杏寿郎から説明を頼めるかな」
「はい!」
変に注目が集まってどぎまぎしてしまったが、しのぶさんの声掛けから皆の顔が真剣なものになる。
お館様に話を振られ、杏寿郎がこの前自分が十数日居なくなった件について詳しい説明を始めた。
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