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「…えーっと……。随分現実味のない話ですが、煉獄さんはあの期間、ずっと未来の世界に居たと…?」
「明華ちゃんって未来から来たの!? 凄いわ!そんなことがあるのね!」
「そうだ!! 未来の世界は画期的で、便利なものが多かったぞ!
……というのは後で話すとして、今重要なのはそこではないんだ。明華、漫画を借りられるか?」
『はい、どうぞ』
お館様に話をするときにも使った単行本を杏寿郎に渡す。突然未来の世界がどうのこうの言われたって信じられないし、それがこの会議とどう繋がるか分からないと思うから、現物を見てもらうのが手っ取り早い。
「明華の世界に流通しているものだ」と、杏寿郎がみんなに見えるように漫画を一冊手で持ち上げた。
「あ? …俺?」
「明華を此方へ連れてくるときに一緒に持ってきたのが、これを含めて8冊ある。本当は全部で23冊あるのだが、数が多くて全ては持ってこれなかった。
“鬼滅の刃”という書物で、鬼や鬼殺隊のことが物語形式で描かれている。例えばこれには、冨岡が上弦の参と戦っている話が載っている」
「…? 俺は上弦と会ったことなどないが……、…!」
「……成程、そういうことか…」
不死川さんが表紙の17巻は“無限城”での戦闘が描かれている巻だ。名指しされた義勇さんは杏寿郎の言葉に一度は首を傾げたものの、すぐにハッとしたような顔をする。続けて宇髄さんも納得したように声を漏らし、他の柱も同じような反応を示した。
さすが柱。突拍子のない話をされてもすぐに順応するし、頭の回転も速い。
「明華の世界にあったこの“鬼滅の刃”は、とある人の手により描かれた“架空”の物語らしいが……これがどういうわけか、俺達の現実と繋がっている。
上弦を含む鬼の倒し方、奴らがいつどこに現れるか、鬼殺隊の誰が応戦するか。その過程や結果が、この書物に詳しく載っている」
「ねえ、それってもしかして……」
「ああ。鬼舞辻無惨をどう倒したかも記録されている」
「!!」
柱達の顔色が変わった。今は無惨様の倒し方どころか姿形すら分からないはずだから、これがどれだけ重要で、重大なものか。ずっと読者だった私は分かっているつもりだ。
宇髄さんが「とんでもないもん持って帰ってきたな」と杏寿郎に呟き、杏寿郎が「まったくだ!」と笑う。
初見では漫画があったところでまず間違いなく信じてもらえないと思うけど、この場を設けたのがお館様であり情報を持ってきたのが杏寿郎だから、みんなもひとまず信じざるを得ないと言ったところだろう。
本当に、私がこの世界に単独で乗り込む展開じゃなくて良かった。私がいくら真剣に話したって、きっと誰も信じてくれない。
「明華さんは、会う前から私達のことをよく知っていたのですね」
『あ…はい、ごめんなさい。きっと気持ち悪いですよね……』
「いえ、明華さんとの初対面を思い出していたんです。そういえば私、名前を聞かれなかったなあって。納得しました」
しのぶさんが綺麗に笑う。杏寿郎以外で唯一、ここに来る前に交流があった柱。
そうか、名前の確認はしなかったんだっけ。アオイちゃんから話は聞いていたものの初対面なら一言くらい確認があっても良いよね。というかアオイちゃんに至っては誰からも聞いてないのに名前呼んじゃったし、その件が伝わって不思議に思ってたりしたんだろうか。
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