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『ああもうどーしよ…わたし全然煉獄さんの役に立てない……』


「いや、十分立ってるだろう…」


『どうすれば帰れるか……こうなったらネットでそれっぽい作品探して片っ端から……』




最近転生ものが流行ってるみたいだし、知らない作品でも読んだら何かの手掛かりになったりしないかな。トリップとはちょっと違うけどまあ似たようなものでしょ。
私がソファに座ってスマホで検索をかけているのを、同じく隣に座った煉獄さんが眺めていた。




「君は…俺に帰ってほしいか?」


『え?…うーん、正直もうちょっとくらいいて欲しいけど。
でも煉獄さんが帰りたいなら、わたしは全力で協力するよ』


「……。そうか…」




質問してきた煉獄さんがなんだか控えめな気がして、スマホに向けていた視線を一旦彼に移す。
案の定あまり浮かない顔をしていたから、優しさ故に余計なことを考えてるのかなと思った。




『わたしのことは気にしなくていいからね?ほんとに!
わたしはただ、生活を保障するだけの人間だと思ってくれればいいから』


「それではあんまりだろう。赤の他人の俺にここまでしてくれているのに」


『煉獄さんだからしてるだけで、全くの赤の他人にこんなことしないよ。そもそも家に上げないし。
…うーん、やっぱりトラックで轢かれるのが多いなー…なんかもっと違うやつ…』


「……」




異世界、転生、理由、みたいな単語を入れて出てきたページに順にアクセスしていく。ランキングと称してまとまっているページがあったから見てみたけど、圧倒的に交通事故系が多そうだ。それは試せないから違うのがいい。ぶつくさと独り言を言いながら他のページを探す。




「君は少し、俺を中心に動き過ぎだ」


『しょうがないよ。煉獄さんがわたしの世界の中心なんだから』


「…っ」




なるほど、ドアを開けたら異世界でしたっていうのもあるんだな。そんな面白いドアがうちにもあれば良かったけど、あるのは玄関と自室とトイレのドアくらい。
さすがにファンタジーに寄りすぎてて試すまでもないか。いつも頻繁に開け閉めしてるけど一回も異世界に飛んだことないし。

画面を見ながら会話を続けていたら、何故だか横から急に抱きつかれてびっくりして手を止める。




『…どしたの?』


「君が心配だ、出会ったばかりの俺にそんなに入れ込んで」


『……んー、ありがと。でも大丈夫だよ。会う前からこんな感じだから』




何かと思えばそんなことか。自分は普段からこんな感じのオタクだから何とも思ってなかったけど、本人から見れば異色なわけだ。
それもそうか。知らない人に初対面でここまで好かれてるんだもんね。確かに、逆の立場だったら心配にもなるかも。
でもそれは煉獄さんがここにいようといまいと変わらないから、煉獄さんは気にしなくて大丈夫だよ。特に深く考えもせず返した後、彼の言った言葉には違う意味が込められていたことに気付く。




「俺は…もう少し君の傍にいた方がいいのだろうか。それとも、負担になる前にさっさと帰った方がいいだろうか」


『…好きにしていいよ。負担にはならないから』




言われてから理解して、思わず一瞬口籠る。
――ああ、迷わせてしまった。




「そんなに君が喜んでくれるなら、もう少しくらい傍にいてやりたい。ずっと…とは、言えないが」


『…ごめんね。気遣わせちゃって』


「別に気遣いじゃない…俺がそう思っただけだ」




ぎゅう、と回る腕の力が強くなる。

ストレートに感情をぶつけたのはまずかったかな。
私が迂闊に好きだと伝えたせいで、優しい煉獄さんは帰るのを躊躇ってしまった。彼には彼の帰るべき世界があるというのに。家族や仲間も待っていることだろう。完全に余計なことをした。
もう手遅れだけど一人で反省する。“帰ること”に罪悪感を持たせちゃダメだろ、私。


黙って肩口に顔を埋めた彼は、そのまますぐに動こうとはしなかった。









(優しいなんて、会う前から知っていたでしょう?)




END.






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