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『ほんとはね、最初は義勇さんのこと好きになると思ってたんだ』


「…うん?冨岡のことか?」




ご飯を食べながら、初めて「鬼滅の刃」という作品を読んだ頃のことを思い返す。

私が好きになるのはどちらかと言うとクールで大人っぽい人だから、この作品で煉獄さんを好きになったのは意外だった。
見た目や性格からして絶対義勇さんのこと好きになると思ったのに。いや実際好きではあるんだけど。
友達からも意外だってよく言われるんだ、と話していると目の前の彼が箸を止めてぼそりと呟いた。




「…俺以外にも好きな奴がいたのか」


『ん?うーん、そうだなあ…ぶっちゃけみんな好きかな。漫画読んでて誰かを嫌いになるってほとんどないし。
しのぶさんとか蜜璃ちゃんとかも好きだし、お館様も好きだし、あとは……』




炭治郎くんの名前を出し掛けて、まだ会ってなかったらまずいなと思い確実に知ってそうな人を探す。この人はすでに炎柱だから、柱のみんなならある程度は問題ないだろう。
他に言っても良さそうな人は誰だろうかと考えていたら煉獄さんが眉間に皺を寄せていることに気付いた。




「……」


『…煉獄さん?』




話し掛けても反応がない。出しちゃいけない名前を出してしまったか?…いや、そんなことないよな。念のため煉獄さんより後に入ったっぽい時透くんと伊黒さんの名前は出さないようにしたし。蜜璃ちゃんとは柱になる前から知り合ってるはずだし。
じゃあ何だろう。そんなに難しい顔をさせるようなことを言っただろうか。

しばらく見ていたら彼が無言のままむっとしたので、もしや、と思った。




『もしかして……拗ねた?』


「!」




言うや否や分かりやすく顔が赤くなったのでこっちが驚いてしまう。まさか、そんなことがあるのか。
何も言えないでいると、「あまりにも甘やかすから俺が特別なのかと思った」とむっとしたままの彼が続けた。…困った、うちの推しがとんでもなく可愛い。




「……笑うな」


『だってかわいいから…』


「可愛くないだろう、こんな図体のでかい男が」


『かわいいよ。それに間違ってないよ、煉獄さんはわたしの特別だから』




そもそも、今していた話は「義勇さんを好きになると思ってたのに実際は煉獄さんだった」って話なのに。途中でちょっと話が逸れちゃったけども。
この感情を詳しく説明する気はないけど、今さっき私が好きだと言った他の人より頭一つ抜けていることは伝えておきたい。




『わたしの部屋にあるの、煉獄さんのグッズだけでしょ?わたしは煉獄さんが一番好きだよ』




だから変な勘違いしないで、と笑ったら彼も「ああ!」と笑ってくれた。
続けて「そうだ」と何かを思いついたようなことを言ったので耳を傾ける。







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