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『そうだ、明日行くところなんだけど』


「おお、待ってたぞ」




本日のデザートである鯛焼きを食べながら、「やっと教えてくれるのか?」と杏寿郎が言う。

休みを確保したこともチケットを入手したことも伝えてあったのに、肝心の中身については全く触れていなかった明日の件。
理由は簡単だった。それまでに杏寿郎が帰ることがあれば、どんな場所か気にならせたまま帰らせてしまうことになっていたから。
そこまでもったいぶるほどかと言われると微妙だけど、変に期待させちゃったらと思って。どこまで記憶を保って向こうに戻るのかは分からないから。


明日も杏寿郎は変わらずこの世界にいそうだし、行くなら朝早くに起きて家を出たいから今のうちに話は済ませておくべき。
スマホでその場所のホームページを検索して、トップに大きく出てきた写真を杏寿郎に見せる。




『明日行くのは、ここです』


「ふむ……なんだか、外国のような街並みだな」


『人が住んでるわけじゃないの。ズバリ、“遊園地”です』




写真を指でスライドすると別の写真が出てくる。色とりどりに飾られた園内、可愛いキャラクターがたくさん出演するパレード、大きなジェットコースター。
私が杏寿郎に「行きたい」と言っていたのは、関東にある有名な遊園地のことだった。


調べたところ杏寿郎のいる大正時代にも遊園地というものは存在していたようで、今もなお営業している場所もあるらしい。でも今現在あるものとはだいぶ異なるものなんじゃないだろうか。
少なくとも大きな観覧車などの乗り物は彼の時代にはなかったと思う。

そして仮に大正時代に遊園地があったとして、彼が行ったことがあるとはあまり思えなかった。完全な偏見だけど、あの慎ましい煉獄家の人間が遊園地ではしゃぐ姿が全く想像できない。

試しに「こういうとこ行ったことある?」と聞いてみたが、案の定「いや、ない」と即答だった。




『ちょっと子供っぽいし、杏寿郎には楽しいかどうか分からないんだけど…』


「大丈夫だ。君の行きたいところならきっと楽しい!」




俺一人で行くわけじゃないからな、と彼が笑う。
一緒に行ってくれるのがこの人で本当に嬉しい。




『平日だけど、人気のとこだからそれなりに人は居ると思うの。わたしもいつも以上に気を付けるね』


「ああ!俺も気を付ける!どのくらい滞在する予定なんだ?」


『いろいろ並ぶと思うから、朝から行っても帰るのは夜かな……夜にやるパレードも見たくて』




こういうとこは何をするにも並ぶからとにかく時間が掛かる。さすがに休日よりは何倍もマシだろうけど。
杏寿郎がいるし明日も仕事だからあんまり夜遅くまで出掛けるのは良くないけど、有休を使ってまで行く場所だから可能な限り楽しみたい。
下調べは空いた時間にやっていて、パレードの時間と場所は把握していた。




「一日中遊ぶ、か……貴重な日になりそうだ」


『杏寿郎も気になるもの見付けたら言ってね。楽しめるといいな』




半分こにした鯛焼きの片方を食べ切る。やっぱり餡子もクリームも美味しい。
この後すぐに寝たらヤバそうだな。また柱稽古してもらった方がいいかも。

杏寿郎が歯を磨いている間にクローゼットから明日の服を見繕う。
前に高かったけど可愛くて思わず買っちゃったやつにしようかな。汚したくなくてあんまり着てないから。
合いそうなアクセサリーもいくつか取り出して服と一緒に置いておいた。これで明日の朝隣に誰もいなかったら笑うしかないね。


準備を整えていたらいつの間にか夜が更けていて、慌てて自分も寝る支度をする。
明日が来てほしいような来てほしくないような、そんなドキドキを胸に抱えてゆっくりと目を閉じた。






やすみなさい、また明日


(貴方が居るとは、限らないけれど)




END.







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