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「面白かったな!!」


『うん、楽しかった!』




メリーゴーランドを乗り終えて園内を歩く。どこを見てもカラフルだから見てるだけで楽しい。
次はあれに乗ってみようか、と向こう側に見えてきたアトラクションを指さした。




「並んでるな…」


『さっきのがたまたま空いてただけかも。休日だと何時間も並ぶやつあるから』


「そんなにか?並んでいるだけで一日が終わりそうだな…」


『うん、遊園地って大体そういうとこだから』




人気どころを選んでいたら一日かけても片手で数えるくらいしか乗れなかった、なんてことは多分ザラにある。今日は平日だからそんなことにはならないと思うけど。
それでも全く並んでいないことはなくて、今から行こうとしているアトラクションにはそこそこ人が集まっていた。


近付いたら入り口に「待ち時間20分」と書かれたパネルが置いてあるのが見えて、その向かい側にチュロスの出店を見付ける。ちょうどいいやと思ってそのお店に立ち寄って、プレーンとチョコのチュロスを一本ずつ購入。
手に持ったままアトラクションの外に伸びている待機列に並んだ。




「これはどういう乗り物なんだ?」


『みんなで船に乗って川下り…みたいな。途中に恐竜の模型があるみたい』


「ふむ、こんなところに川が?
…これ美味いな。明華、良ければこっちの味も食べ…、……!」


『? どうしたの?』


「あ、いや……」




杏寿郎がチュロスをかじった状態で固まったので首を傾げる。何かあったのかと思い視線の先を追ってみたけど、ただ前に並んでいる人が見えるだけで。

でも明らかに様子がおかしかったのでしばらく杏寿郎のことを見つめていたら、彼にしては珍しく口籠ったような感じで話し始めた。




「その…。…向こうにいる二人が、……口付けしてるのを、見てしまって」




小声でごにょごにょ話される。彼のこんなに小さな声を初めて聞いた。
理由が分かって改めて前を見たら、確かに五組くらい前のところに見るからに熱々なカップルが見えた。…ああ、あれのことか。
ああいうのは一定数いるから気にしなくていいよと横で気まずそうにしている杏寿郎に耳打ちする。




『…ま、恋人同士で来る人多いしね。もちろん友達同士で来る人もいるだろうけど』




周りを見渡せば、他にもカップルらしき二人組があちこちにいる。男女二人でこんなとこに来るのはほとんどが恋人同士だろう。相当仲良くないと二人で遊園地に行こうなんて話は出ないだろうし。
私達みたいな完全な友達同士の男女ってどのくらいいるんだろうか。絶対少数派だと思う。
まあ今は杏寿郎が終始腕にくっついてるから、傍から見たら恋人に見えるとは思うけど。




『ほら、順番来たよ!』


「あ、ああ」




そうこうしているうちに順番が回ってきて、杏寿郎が持ちっぱなしだったチュロスの包装紙を回収してカバンに突っ込む。
これも久しぶりに乗るな。どんなのだったか忘れちゃった。景色に夢中になりすぎて、うっかり杏寿郎と離れないようにしないと。


声を掛けた彼はなんだかぼうっとしていたみたいだったけど、スタッフさんの元気な声で船が出発する頃にはまたキラキラした目で外の景色を眺めていた。







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