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――




『かわいい〜!!』




所変わって、レストラン。混むのを見越して早めに来てみたら正解だった。
園内限定のキャラクターをイメージした可愛いフードメニューを受け取って席に着く。やっぱりこういうとこに来たらこういうのが食べたくなるよね。

フードの写真をバシバシ撮っている私の向かいで、私とは別のものを頼んだ杏寿郎が何やら食べ物とにらめっこをしていた。




「とても可愛らしいが、値段が可愛くなかった…」


『そう?わたしこういうの慣れ過ぎて何とも思わなかった』


「そういうものなのか…?しかし、食べるのがもったいない」




お皿を両手で掴み、尚もにらめっこ中の杏寿郎。フードよりも可愛いのでついスマホを向けそうになる。
これを写真に残しておけないなんて酷い。世界は残酷だ。

オタクだからなのか、小さい頃家族で来たときに母が言っていた「こういうところは何を食べても高いから〜」という言葉が今はあまり響かなかった。コラボメニューならこんなものでしょと思ってしまう。
むしろ思ったより高くないとまで感じた。これだからオタクは金欠になるんだ。


「可愛いけど冷めないうちに食べなよ」と促すと、杏寿郎が意を決したようにスプーンを持つ。そんなに緊張しなくても。
一口すくって口に入れて、こっちを向いてにこにこした。何なんだろう、この可愛い生き物は。




『お昼食べたら反対側の乗り物に乗って、途中で14時からやるパレードが見たいの。
パレードが終わったらまた別のに乗って、夜にここでもう一回パレード見て…』




テーブルの空いたところにマップを広げて説明する。時間が限られてるからなるべく効率良く回らないと。
今のところ杏寿郎も楽しんでくれてるみたいだから、夜までこの調子で楽しめたらいいな。この後も楽しみだ。

考えていたことがシンクロしたのか、彼が急に「今日はきっと人生で一番楽しい一日だ」と言い始める。




『…そんなに?』


「ああ!何せこんなに張り切って遊ぶのは初めてだし、しかもとびきり可愛い君が一緒だからな!!」




満面の笑みでそう言い放った杏寿郎に、思わずガタリとテーブルに腕をぶつける。
うっかりフォークも落としそうになった。危ない。店内が騒がしくて助かった。
あんたも人前でキスしてたカップルの一歩手前まで来てるぞ、と思ったものの口には出せず。「何言ってんだか」と熱くなった頬を誤魔化すように言い返すのが精一杯だった。




「ふふ、午後もたくさん遊ぼうな!」


『……うん』




笑顔を崩さない彼の真意はよく分からない。わざと私の弱そうな言葉を選んでいる感じはするけども。
もしかしてこのお昼ご飯のお礼だったりするのか?…うん、有り得そう。


彼との夢の旅は、まだもうしばらく続く。






 1


(まさに、夢の国)




END.








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