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「明華、今から言うことは気遣いじゃないことを先に言っておく」
『? うん』
「ピザも焼き肉も、唐揚げ弁当も……どれも全部美味いんだが、俺は君の手料理が好きだ!」
『…!』
「だからその、これからはピザをたくさん頼もうとか、そういうことを考えていたなら訂正しようと思って…」
急に改まってどうしたんだろ、と思ったら。全然考えもしていなかったことを言われて固まってしまう。
理解するまでに少し時間が掛かったけど、照れたような焦ったような彼の態度を見たら言われたことが腑に落ちた。
…ああ、勘違いさせちゃったんだな。さっき私が杏寿郎のこと眺めてたから、よっぽどピザが美味しかったんだなって考えてると思われたんだ。美味しいものを食べさせたい気持ちはあるから間違ってはいないけど。
「いろいろ買ってくれるのは嬉しい」とか「ピザが美味しくないわけじゃない」とか、「でも凝った料理を用意しようとは思わなくていい」とか、杏寿郎にしては珍しくああだこうだとぶつぶつ言って。
最後は諦めたのか、「上手く言い表せないんだが」とほっぺにソースが付いた可愛らしい顔で彼は苦笑いした。
『杏寿郎』
「ん?……!」
ソースを親指で拭って舐めとる。ボッと音が出そうな勢いで赤くなった彼に笑いそうになった。そういえば、もう日焼けの赤みはなくなったんだね。
物事にはハッキリしているタイプの彼が私のことであれこれ悩んでくれたんだなと思って、自然と頬が緩んだ。
『ありがとう。誰かに料理を振る舞うことってなかったから、美味しいって言ってもらえるとすごく嬉しい。…しかもそれが杏寿郎なんて、幸せだな』
素直な気持ちを口に出したら彼は嬉しそうに笑ってくれた。
それを見てまた嬉しくなるのと同時に、一度は捨てたあの思いが強くなる。
『(…死なせたくない)』
こんなに素敵な人なのに。
こんなに人を幸せにできるのに。
どうしてこの人は、若くして死ぬ運命にあるのだろうか。
『(……わたしに何か、できることはないのかな)』
目を細める。
たとえその死が、必要なものだったとしても――どうにかして生き延びて、幸せになってほしい。そう願わずにはいられない。
再びピザを頬張り始めた彼が、「手が止まってるぞ」と私の皿の最後の一切れを指差した。
君が幸せになる方法
(私は今、幸せだから)
END.
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キメ学、良いですね(宅配ピザの件)
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