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「(これが古い町並み……か…)」




目的地に到着し、昼食を挟みつつ辺りを探索した。


明華から聞かされていた「古い町並みで有名」というのは、納得できるようなできないような微妙なところだった。
確かに俺の世界の町と似たような雰囲気はある。建物もこれまでに行った場所よりかは古めかしい見た目のものが多く、洋服ばかりの人の中に今日は和服を着ている人を初めて見掛けた。
でも「古い」かと言われると、さすがに百年前から飛ばされた俺からしたら十分新しかった。道は綺麗に舗装され、商店街には見たことのない色とりどりの商品が並び、少し目を上に向ければ高い建物がいくつもある。
ここの人達から見たらこういうのを「古い町並み」と言うのだな、ということだけは何となく理解できた。

明華が古くからあるという寺に連れて行ってくれ、その立派な門を見上げる。場所と名前からして俺も行ったことのあるところだと思う。
明華が調べた情報によるとここは何度か再建されているらしく、古くからあるのに新しく見えたのはそのせいらしい。
少し歩き回ってみたが、特に何かが起こる様子はなく。


人の賑わう商店街の中、気になるお店があったらしい明華と一緒に店内を覗いた。




『かわいい〜!』




動物をかたどった小さな根付のようなものを手に取って明華がはしゃぐ。いかにも女の子が好きそうなきらきらした装飾品が所狭しと並べられていた。
あまり大きくはないその店に客は俺達しかいなくて、少し気を緩めながら二人で商品を見て回る。




「(買ってやれたら良かったな……)」




花のついた薄桃色の髪飾りを手に取る。彼女が喜んでくれるのなら、どれでもたくさん買ってやりたかった。
でも今の俺には持ち合わせがないから、ここでただ眺めることしかできない。


明華が横から「何か気になるものあった?」と俺の手元を覗き、それが髪飾りだと気付くと「誰かにあげるの?」と言うので、笑って彼女の髪の傍に持って行った。




「明華に似合うかと思って」


『え…』


「向こうならいくらでも買ってやれたのにな」




「残念だ」と言って商品を棚に戻そうとすると、明華が「これ買ってくる!」と言って俺の手から髪飾りを奪った。止めないと本当に買いそうな勢いだったので慌ててその腕を掴む。
値段すら見ていないのに、何故そんな急に。明華が自分で気に入って買うのなら良いが、それはさっき俺が勝手に選んだもので。

突然どうしたんだと言ったら、まだ髪飾りを手放さない明華が「だってレンが選んでくれたから」と言った。




『わたしのために選んでくれたなら、わたしこれ絶対欲しい……』




だから買ってくる、と再び背を向けようとした彼女をもう一度引き留める。そんなことならもっと真剣に選ぶから待ってくれ、と。
女性の好むものは俺には分からないし、明華の好みもあるから気に入ってくれるかは分からないけれど。店にあった髪飾りをひとつひとつ明華にあてがいながら彼女に一番似合いそうなものを探す。


いろいろと迷い、明華にも聞いてみてやっと決まったひとつを店の人に包んでもらうと、ご機嫌な明華が早速自分の髪にそれをつけた。




『ふふ』


「金は出してやれなかったが…喜んでもらえて良かった」


『うん、ありがとう!レンにも何か買ってあげたいな』




身に着けるものだったらどうにか向こうに持って帰れないかな、と商店街に並ぶ店をきょろきょろ明華が見渡す。
着ていた服や持っていた刀は此方に来たときもそのままだったから、肌身離さず持ち歩いていれば突然帰ることになったとしても向こうに持って行くことができるかもしれない。







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