2


――




帰宅して顔を合わせた杏寿郎は、なんだか神妙な面持ちだった。




「明華……日付が変わるまで、手を繋いでいてもいいだろうか?」




お喋りは普通にしてくれるけど、ときどき考え込むように口を閉じる。相変わらず口角は上がったままなんだけど。

一通り済ませてそろそろ就寝、といったところでベッドに腰掛けた杏寿郎がこちらに手招きをした。“今日”という日が終わるまで横になる気はないんだということは言葉と雰囲気で察する。別に、多少寝る時間が遅くなったところで私は全然構わないけども。

すとんと隣に腰を下ろしたらすぐに手を繋がれて、応えるように握り返す。
このまま彼が向こうに飛ばされたら私はどうなるのかな、って、そこだけはちょっと気になった。




「万が一があれば手は離す。心配しなくても大丈夫だ」


『あ……うん…』


「本当は……連れて帰りたいがな」




ぽつりと寂しそうに言った杏寿郎が、握っていた手の力を強めて。何と返せばいいか分からずにしばらく沈黙の時が流れる。
別の話題を振ろうにも特に何も思い付かなくて、彼に握られている右手をただじっと眺めていた。




「…どうした?」


『あ、いや……杏寿郎の手、好きだなって…』


「そうなのか?」


『うん。漫画で見てたときからずっと、綺麗だなって思ってたから…』


「そうか?自分では何とも思わないが…君に褒めてもらえるなら、嬉しいなあ」




繋いでいた手に彼も視線を向ける。
骨ばってて“男”らしさ全開で、だけど爪が整ってて…どこか色っぽい手だと思う。
そういう作画なのかと思ってたけど、実物もその通りに綺麗だった。空いていた手で彼のごつごつした手の甲を撫でると、照れたのか杏寿郎が顔を赤くする。




『(この手が傷付くことがなくなるなら…わたしは、それがいいけど)』




杏寿郎はきっと、そうじゃないんだろうな。
ふと目が合った彼は首を傾げて、私の気持ちを知らないまま頬を染めて笑う。







<<prev  next>>
back