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『…あれ?兄さま?』
部屋のドアを開けると、そこには見慣れた人物がソファーに寄りかかっていた。
“うちはイタチ”。
うちは一族を弟だけを残して滅ぼした張本人であり、犯罪者組織“暁”メンバーでもある。
もともと私の知り合いではないが、ふとしたことで仲良くなった。
私はこの人が犯罪者と知っていて一緒にいる。
この人は知る限りでは誰よりも優しい。今でも一族を滅ぼしたなんて信じられないくらいに。
『兄さま……?寝てるの…?』
半分居候と化した合鍵を渡してある彼が部屋にいることに関しては今更何も不思議には思わない。
問題はそこではなくて、彼がぴくりとも動かないことだ。
呼んでも近付いても変わらない状況に首を傾げる。
『(ほんとに寝てる…?)』
いつもなら呼べば笑って振り向いてくれるのに。
今日はよほど疲れているのだろうか。
珍しい、そう思って徐々に距離を詰める。
寝顔なんて見たことがない。
『(わ…)』
さすがにこれくらい近付けば起きるかな、なんて。
ドキドキしながら更に近付いたのに、あっという間にあと数十センチまで近付けてしまった。
そのまま顔を覗き込む。
『(わ…睫毛ながい……』
知り合ってからしばらく経つが、こんなにも至近距離なのは初めて。
長い睫毛。
整った唇。
綺麗な顔立ち。
『(見れば見るほど美人…)』
「架音」
『……わ!?』
――起きた。
そう理解した瞬間にはもう、彼の腕の中にいた。
「そんなに人のこと見つめるな…。さすがに照れる…」
『起きてたの?』
「視線を痛いほど感じたからな」
『だってあまりにも美人だから…前々から思ってたけど……』
「美人って…。俺は男だぞ?」
『だって本当だもん』
「……まったく」
軽く溜息を吐いた彼にぎゅっと抱き締められる。
この腕の中、落ち着く。
寄りかかってうとうとしていれば、ふと耳に入った言葉に思わず目を開けた。
「お前の方がよっぽど可愛いのに」
――いま、わたし、なんて言われた?
『兄さま、今なんて…』
「…っ」
後ろから回っている手を軽く解きながら顔を見上げる頃にはもう手遅れで。
片手で顔を覆い隠す彼の顔を見ようとするも、私の力では敵わなかった。
ただ指の間から見えた赤い頬は、きっと見間違いではない。
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(すき→あいしてる)
(どうしよう、)
(いま、すごくドキドキしてる)
END.
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