お年頃

 




『兄さま!』




自分以外誰もいない小高い丘の上でとある人と待ち合わせ。
犯罪者の貴方と木ノ葉の忍の私で、公に出来ない秘密のデート。

待ち合わせ時間よりずいぶん早く着いてしまうのはいつもの癖。
それを見抜かれたからか彼もだいぶ早くここに来るようになったけれど、最近ではさらにその上をいく私。
「今日も先を越されたか」と、少し苦く笑った彼に頭を撫でられた。




「架音…」


『……!』




抱きしめられて、抱きしめ返して。
何よりも大好きで幸せな甘ったるい時間。


と思ったのも束の間、片手で私の前髪を上げようとした彼に全身がびくりと反応した。




『っだ、だめ!』


「!?」




宛てがわれた手を振り払う。思ったより力んでしまって、その勢いに兄さまは驚いた様子。
少しハネた前髪を急いで手で直した。




「…どうした?」


『い、いいからだめなの……。』




不思議そうに首を傾げる彼の顔から目をそらしていれば、諦めたように手を下ろすのが見えた。




「キス…だめか?」




ぽんぽんとその手で軽く頭を撫でられる。
いつになくしゅんとして眉をハの字にする彼に、はっとして否定する。




『ち、違うの…!だめとかじゃなくて……普通のキスなら、いいの…』


「…?」




だんだん語尾が小さくなっていく。
よくわからないという様子の彼はもう一度首を傾げながらも、数秒後唇にちゅっと軽い口付けをしてくる。




「…おでこは嫌だったか?悪いな……気付かなかった」


『そそそそんな、嫌とかじゃないの…!』


「……?
嫌じゃないのか?なら何で…」


『そ、その……』


「?」




首を傾げること、本日三度目。この人にこんなことをさせるのは私だけかもしれない。

なおも不思議そうに顔を覗き込んでくる彼に、正直に言ってしまおうと覚悟を決めた。




『……、にきび…出来ちゃって、……その…。』




ぐるぐる、目を泳がせる。

ついこの前、鏡を見ていて発見してしまったそれ。
一回見つけてしまうと気になるのは仕方のないことらしく、ことあるごとに鏡を見てはにらめっこしていた。
触ってはいけないと分かっていてもそうはいかないのが人間の性か。ついついいじってしまって、初期より赤く腫らしてしまった。

ファンデーションか何かで隠すにしても、化粧自体があまりよろしくないと聞いたことがある。
だから前髪で隠していたのだけど、持ち上げられてしまえばどうしようもない。ましてやキスなんて。


そっぽを向いて告げれば目の前でくすりと笑い声がして、視線を元に戻す。




「なんだ…そんなことか」


『そ、そんなことって…!女の子には重要なんだから…!』


「フ…。お年頃ってやつか」


『……
…いいもん、美人な兄さまにはわからないもん』


「………」




兄さまが反応に困るワードのひとつを声に出せばいつも通りの困った顔。
口を尖らせていればまた笑って、「そんなもの気にするな」と軽く小突かれる。




「放っておけばそのうち治るさ」


『そうかなあ……』


「ああ。だから心配しなくても大丈夫だ」




ふっと目を細めて、「しばらくこっちにするか」と悪戯に笑った彼は頬にキス。
その行動にほっぺにも出来ちゃったらどうしよう、なんて思わず零せば唇以外お預けになるなと笑われる。




「でも結局架音の可愛さは変わらないだろう?」


『……、もう…』




整った顔で綺麗に微笑む彼の頬を、今度は私が小突く。

私があなたを好きになっちゃったから体も反応してしまったのかもしれないと、目の前で揺れる長い黒髪になんとなくそんなことを思った。









(やっぱり俺が気にしないからこっちにもしていいか?)
(……だめ)





END.





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ニキビ治したい。

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