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──…




『そろそろ行こっか?』


「…九時か」




砂の国では夏も本番というこの時期、気付けば延びていた日のおかげで七時でも外は明るかった。
星を見るのなら出来るだけ暗い方がいいと頃合いを見測る。


長針が真上を指し示すその時間にテマ姉に声をかければ「平気じゃないか」とOKの合図。




「……いい所がある」


『ほんと!?じゃあそこ行こ!』


「ああ、」




外に出ようとした瞬間、引き留めるように提案してきたのは誰でもない我愛羅で。
この中でイベントに一番興味を示さない彼の言葉は珍しいもので、ちらりと見やった兄と姉は顔を見合わせて目を丸くしていた。




「少し離れた崖…あそこならよく見える」


『ふふ、楽しみ!』




崖の上という選択が何とも彼らしくて軽く笑う。
振り返った先の兄と姉も「そこにしよう」と同意してくれて、四人でその場所へと向かった。




──…




『綺麗…!』




案内されながら歩くこと約十分。崖の上と形容されていたその場所は文字通り崖の上。
でもその分高台で夜空が近くて、溢れるような星空に思わず溜息。




「いい所見付けたじゃん、我愛羅」


「人には教えていないが……まあ、架音の為ならいいだろう」




ふわり、
吹いた風に乗って耳に届く台詞はやけに心地よい。

何の明かりもない暗闇で彼の顔は隠されて見えないけどそれは向こうも同じで。
わざわざ出された自分の名前に頬が少しだけ熱を帯びたのを隠すには丁度いい。




「……架音を奪うのはかなり難しそうじゃん」


「諦めろカンクロウ。下手に何かやってみろ、砂漠送葬されるぞ」


『…ねえそこの二人、なんか遠くない?』


「え!?はは、気のせいだ架音…」




姿がはっきり見えないものの、徐々に遠ざかっていく気配を不審に思って声をかける。なんだか知らないがテマ姉とカン兄がだんだん遠ざかっているのは確か。
「私相手にばれないと思ったの」と言えば隣にいた我愛羅に「あいつらのことは気にしなくていい」と止められる。




「…で、どれが彦星でどれが織姫だ」


『んーと、
あの星の集まりが天の川で、その横にある明るい星二つ!
あっちが彦星で、その反対が織姫』


「へえ…確かに川の両端にあるな」


「普段星なんて見ないからな、なんか新鮮じゃん」


『私もあんまり…我愛羅、月なら見に行くんだっけ』


「……今度見に行くか?」


『行くー!』


「(…やっぱ無理そうじゃん)」


「(ドンマイ、カンクロウ。さ、私らは退場するぞ)」


『ちょっとテマ姉、また遠ざかってる』




私の言葉に苦笑いするテマ姉、その隣で同じように苦く笑うカン兄、私の隣で星を目に映す我愛羅。
その日常全てが愛おしくて、ずっと続いて欲しいと心から願った。
きっと今頃あの短冊は風に吹かれて揺れている。


いつか死は必ず訪れる。それくらい分かっている。
永遠なんて存在しないことはずっと昔に知ってしまった。

でも、それでも。
それでも、“いつまでも一緒に”と願った。


どうか、別れが訪れるその時まで。
私は、この人達と。









(来年も、きっとまた同じ事を)
(私の願いは、終わらないから)




END.




2008.7/7