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「あれ?架音、こんなとこで何してんじゃん?」


『…カン兄』




黙って中の様子を耳だけで窺いつつ待っていれば通りがかったのは我愛羅のお兄さん。
「待ってないで入ればいいじゃん」とさっさとドアを開け始める彼は任務帰りでお疲れのご様子。




『……あ!待ってカン兄、きっと今我愛羅』


「――砂漠送葬!」


「ギャアアア!!?」


『…、あー……』




不機嫌だから入らない方がいいと注意をするよりも彼が部屋に足を踏み入れるのが先だった。
入った途端見慣れた砂と一緒に押し出されて目の前に倒れる彼は何故学習しないのか。




『これじゃ一昨日と同じ状況じゃないの……。』


「…架音、今日もご苦労だった。
無事か?どこか怪我はしていないか?」


『うん、大丈夫』




――多分今はカン兄の方が危ないかな。
なんてこちらに向かってくる風影様に言ったところで「それは問題ないから気にするな」と流されるだけ。

苦笑いしながら報告書を手渡して部屋に入ればばちりと女の子の一人と目が合って、思わず身構える。




「……お前ら。
任務の報告に来るのはいいが、用もなく長居するのはやめろ」


「え〜、いいじゃないですかあ別に……」


「良くない。毎回俺の好みだのなんだのを聞いて何が楽しいかは知らないが…あくまでも俺とお前らは風影と忍の関係だ。
あまり私情を持ち込むな…お前らにも得はないだろう」




はっきりとは言わないものの少しばかり強めに放たれた言葉に、三人組の彼女達は黙って部屋を出て行った。
いくらか重くなった空気に余計に気まずくなっていればいつもと変わらぬ様子で我愛羅が駆け寄ってくる。




「…騒がしくて悪かったな、架音。
ところで確認し忘れたが…襲われたり襲われたり襲われたりしてないか?変な男に捕まったりは?」


『うん大丈夫、襲われたり襲われたり襲われたりしてないし捕まってもないよ』


「そうか、良かった」




こちらに来いと肩に腕を回されて長椅子へと招かれる。
腰を下ろしたそこは私だけの特等席。

先程の彼女達が居たら悲鳴をあげていただろうなと、若干の優越感すら感じる私は醜い女だろうか。




「しかしあいつらはよく飽きないな……さすがにあそこまでされると、俺目当て以外に目的が思いつかない」




溜息を吐く我愛羅は部屋の前にいた私と被る。


我愛羅はその強さに加えて見た目も良いから、本来なら持て囃されて当然で。
しかし今の今までその真逆ともいえる状況で生きてきた彼はこの状況にまだ馴染めていない様子。

風影になった当初こそ自分の周りに群がる女の子に彼は首を傾げていたものの、少々時間が経過した今は理由を察したようで、困惑すると同時に慣れないことに疲れている様子でもあった。




『まあ、風影だったらファンがいても……おかしくはないよね』


「…何だ架音、妬くか?」


『そりゃあ………』




妬くよ。
素直にそう返せば、隣の我愛羅はくすりと笑う。





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