恋の味がする。

 




「架音、恋とはなんだ?」




ある休日の午後。
珍しく任務もなくすることがなかった私は、押し掛けた我愛羅宅でテマリがくれたお菓子を頬張っていた。カンクロウはどうやら一人で任務らしい。


テマリが手洗いで部屋を出ていったかと思えば、突然何の前触れもなく耳に届いた問いかけに手が止まる。
思わず食べ損なったスナック菓子はそっと袋へと戻した。




『……。
我愛羅、何か変なもの食べた?昨日の夕飯マロングラッセ?』


「食べていない」


『じゃあ一体何が…』


「…別に何もない、ただなんとなく……おかしかったか?」


『……、ううん』




首を傾げる我愛羅。彼はいたって真面目らしい。
ごめんなさいと、一連の失礼な物言いをひとまず謝っておいた。




『恋、ねぇ…』




テマリかカンクロウの恋のお悩みでも聞いていたのだろうか。あの我愛羅がこんなことに興味を示すだなんて。
まあでも彼が感情豊かになるのはきっと良いことだ、しかしいきなり言われても難しい。

したことがない訳ではないが、その感情を恋をしたことのない人に説明するのは難しいことだ。




『うまく言えないけど、とにかく誰かを好きになることじゃないかな。
でもただ普通に好きなんじゃなくて、いつも一緒にいたいとか、他の人といたら嫉妬したりとか…独占したいとか。
そう考えるようになったら、“恋”だと思うよ』


「……なるほど」




単純に好きな人間などいくらでもいる。家族も友達も好きなことに変わりはない。
ただ、恋愛として好きである人への“好き”はもっと特別なもの。

言葉にするには私では語彙力が足りないが、一応我愛羅は納得してくれた様子。
なんとなく雰囲気は伝わったかなと袋に戻したお菓子へと手を伸ばす。




「……それなら…やはり…」


『…?』




一人何やらぶつぶつ言い出した我愛羅。
スナック菓子の続きをガリガリ噛み砕きながら、まだ何かあったのだろうかと。
どうかしたのと尋ねれば、気付いた我愛羅が顔を上げた。




「架音…俺がお前にしてるのは、多分それだ」


『ふーん………は?え?』




――コロン。
口に運びかけたそれが軽やかな音を鳴らして床に落ちる。
驚きすぎて目の前にいた彼を三度見した。




『え?我愛羅が?わたしに?…間違いだと思うよ、好いてもらえるのはとても嬉しいけど。
それは多分恋じゃなくて普通の好きの方で……』


「…違う。違う気がしたからお前に聞いてみたんだ……さっきお前が条件を言っていただろう。
それによく似ている」


『………、やっぱ昨日の夕飯マロングラッセでしょ?』


「違うと言っているだろう……」




溜息をつき始めた我愛羅に、俺はどこもおかしくないと再度訂正される。
そんなことはないと思う、絶対昨日気づかないうちに変なものを食べたんだこの人。そうに違いない。

しかしながら腕を掴まれて一気に距離を縮められれば、目の前で揺れる薄緑の瞳に言葉を奪われた。




「……架音、キスってどういうものか…知ってるか」


『…それは知らないわ』




――してみればいいんじゃない。


目を細めれば、挑発的な赤がゆっくりと笑った。










(……甘いな)
(…基本的にずるいよね、我愛羅って)




END.


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二周年ありがとうございます。
そして謝ります、すみません。全然更新できてなかった。

アンケにてダントツ、我愛羅さん。


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