子供と大人の境界線
『イタチ兄さん』
里の隅の方にある、有名な一族のいる集落。
そのうちのひとつの家に私は訪ねた。
扉を軽く指で叩いて、出てきたお母さんにお邪魔しますと挨拶だけして一直線に向かう部屋。
いつものことだから「どうぞ、上がって」とだけ言われて難なく部屋へ向かえた。
「ああ…いらっしゃい、架音」
目的の部屋で、目的の人が迎えてくれた。
昔から良く遊びに来る、見慣れた部屋。
時が過ぎるごとに多少変化はしてるけど、あまり大きくは変わらない。
変わったのは、人が部屋にいる時間くらいか。
時が過ぎるにつれてどんどんこの人は忙しくなって、それに比例して部屋にいる時間が短くなっている。
昔はこの部屋にくればこの人に会えたのに、今はもう予定を聞いてからじゃないと会える確率が低い。
突然遊びに来ても当然のように出迎えてくれるような日々は、いつの間にか終了していた。
「今日はどうした?忍術でも教わりたいのか?」
『ううん、別に』
「……そうか」
別に何かしにきたわけじゃない。
任務で忙しいこの人を一番困らせる用件だと思う。
忍術を教えるとかだったら、多少なりこの人の運動になるかもしれないけど。
何もせず、ただ一緒にいるだけ。
それでも私のわがままに付き合ってくれるあたり、この人は優しいと思う。
弟のサスケもずいぶん懐いてるけど、十分頷ける。
こんなお兄さんだったら甘えたくもなる。
「…どうした、架音」
『何も……』
部屋で座っているイタチ兄さんの横に座ってよりかかる。
体重を預けると、少し笑いながら頭をなでてくれた。
「架音は可愛いな」
くすりと笑う兄さんは、昔と何も変わらない優しいお兄さんだった。
ただそれが、最近の悩みのタネで。
『…ねえ兄さん』
「なんだ?」
『私ももう、大人よ』
「…オレにとってはいつまでも子供だけどな」
くすりと尚も整った顔で笑う。
兄さんは私を昔と変わらずに可愛がってくれる。これが最近の悩み。
可愛がってくれるのはすごく嬉しい、けどいつからかそれは同時に悩みになっていった。
この人に対しての感情が時間とともに確かに変わっていることを、それは意味していた。
この人の中の私は、何年経とうが昔と何も変わらないらしい。
確かに3歳離れてるけど、私だっていつかは大人になるのに。
むすっとむくれると、困ったように笑った後、ぽんぽんと頭を撫でられた。
このあたりが私は子供っぽいんだな、と変に納得しつつ。
「……そうだな、架音ももう結婚できる年齢だな」
その瞬間、さっきまでの兄さんと雰囲気が一気に変わって驚く。
指で髪を梳かれて、撫でられるのとあんまり変わらない動作なのに色気を感じてどきっとする。
色白で長い指に私の髪が絡まってはほどけていく。
本当に3歳差なのか疑うくらい、この人は大人っぽい。
ああ、だから私が余計に子供に見えるんだ。
何回か髪を梳いた指で頬を撫でられて、視線が合った瞬間に心臓が高鳴った。
頬に集まる熱を感じつつ、平常を装って言葉を発する。
きっとそんなの見抜かれていると思うけど。
『…そうよ、私だって結婚くらい……』
「一応できる年齢ではあるな?」
『い、一応って…』
「間違ってはいないだろう?」
『そうだけど……もう、子ども扱いしないでよ』
「フフッ……オレにとってはいつまでも可愛い子供の架音さ。
……まあ、そうだな…」
『!?きゃっ』
急にイタチ兄さんが立ち上がって、私を横抱きに抱える。
突然の事に思わず服にしがみついた。
気付いたら広がっていた身長差と体格差、見た目より何倍も男らしい体つきをそこで初めて思い知らされる。
向かう先は、部屋の壁に沿うように置かれた一人用のベッド。
力の差も歴然としているし、抵抗する気もなくされるがままにベッドに下ろされる。
身構えれば、天井と自分の間にイタチ兄さん。
真上から見下ろす形で覆いかぶさられて、長い髪が私の頬に当たるか当たらないかの距離で揺れる。
つつ、と唇を撫でられれば、完全にその場の雰囲気に酔っていた。
「大人なこと、してみるか?」
にやっと笑った兄さんは、今までの兄さんではなかった。
子供と大人の境界線
それはとても曖昧なもので
(断れるはずもなく)
END.
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仮に続くんだとしたらいつか裏に入りそうな
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