きみとお空デート

 



「ほら架音、どうだ!?」




今日もまた、彼は飽きもせずに自慢の粘土作品を見せてくる。


結った長い髪を揺らしながら、目の前のデイダラは手の上にちょこんと乗った造形物をこちらに押し出してきた。
ここは彼の部屋、あちこちに作品が並ぶ中、粘土による汚れも目立つ。

たった今出来上がったらしいそれは鳥のような形。
確かに可愛いと言えば可愛いのだけども、私は芸術はよく分からないし見せられたところで曖昧に頷くことくらいしかできない。




「ここのラインが特にいいだろ?
更にこれは爆発するからな、うん!まさに芸術だ!」


『今は爆発させないでよ…』


「それは大丈夫だ、うん」




爆発のスイッチはオイラが握ってるからなと、そう言った後でまた創作活動を始めるデイダラ。
両方の手のひらにある口に粘土を食べさせては吐き出させるというその作り方は出会った頃から全く意味が分からないが、まあ今はそんなことどうでもいい。

口を開けば芸術、芸術。会うたびに見せられた作品はもう数えきれない。
打ち込んでいる姿を見ること自体は好きだしそこも含めて好きになったのだが、ここに来てあまりにも長い間この状態なのでそろそろ溜息が出そうだ。




『もう、デイはその鳥さんと結婚すれば!』


「…え?」




服が汚れてしまうからと壁に背を預けられないでいた体勢に限界を感じ、座っていたベッドに雪崩れる。
手を止めた彼はようやく私の機嫌が傾いていたことに気が付いたようだ。
一体放置されてから何十分経ったのだろう。

視界の隅で焦り始めるデイダラから時計に目を移して、40分を確認したところで反射的に我慢していた溜息が零れた。




「ご、ごめん!退屈だったか?」


『いいもん、もう知らない』


「う…ごめん……」


『……せっかく、デイに見せたくて買ったのに』




――これ。
そう言って裾を掴んだのは今日着ているピンク色のワンピース。

動きやすさを重視する私にしては珍しいチョイスだった。
デイダラに見て貰いたくて、試着までして先日買ったもの。

少し高かったけどデート用と思えば別にいいかと思い切ったのに、反応のひとつもなし。
それどころか仮にも彼女と一緒に居るのに創作ばっかり。




『少しは私のことも見て欲しいよ……。』




化粧した顔で枕に顔を埋めるわけにもいかず、ごろりと壁側に寝返った。


このまま不貞寝でもしてしまおうかと考え始めれば後ろに感じた気配とギシリと音を立てて沈むベッド。
頬に宛がわれた手の甲は汚れてしまわないようにと考えた彼の気遣いか。
僅かな熱を感じながら目を閉じる。




「架音…ごめん……。
でもオイラ、いっつも架音のこと見てるぞ?」


『…ほんとに?』


「ほんとだぞ、うん!
それに服もすごい似合ってる…最初に言いたかったんだけど、なんか恥ずかしくて……うん、架音がそんなこと思ってくれてるなんて、知らなくて…」




“ごめん”。
ひたすらその単語を並べ続ける彼をちらりと盗み見ればいつになく凹んだ様子。
先程の自慢げな顔はどこへやら、その表情ひとつで簡単に許してしまうのだから私も相当惚れ込んだものだ。

仰向けに寝返れば、綺麗な青い瞳と目が合った。




「…なあ架音、これからデートしない?うん?」


『デート?』


「架音とゆっくり出来るの久しぶりだったから、オイラの芸術見せたくて…。
それが結局こうなっちまったんだけど、うん…少しは詫びになるかな……」


『……』


「だ、だめか?」


『…ううん、嬉しい!』




ガバッと起き上がる。
彼の言い分に私達が似通った思考回路をしていたらしいことはすぐに分かった。

要するに、彼も。




『ごめんねデイ、私勘違いしてた。理由も聞かないで』


「ううん、いいんだ別に!」


『じゃあ今日はその“芸術”に乗りたい。いつか見せてくれたおっきい鳥さん!』


「空デートだな、うん!もちろんだ!」




ぱっと明るく笑うデイダラに釣られて笑う。
「準備してくる」と立ち上がる彼を見上げていれば、頬にちゅっと軽い口付けをされた。




「架音がオイラの一番の芸術だからな!」




爆発はしないけどと付け足しながら扉が閉まる。
程なくして向こう側に消えた彼の背中に、言われたセリフを反響させながら一人笑った。








(貴方の自慢と一緒に)

(私も、貴方の“自慢”になれてるのかしら)




END.




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二周年企画!
アンケコメよりランダムに抜粋、
水樹さん、デイ☆⌒+.さん、それと
名前のわからない方…、
コメントありがとうございました。

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