「やっぱり似合わない」
「まーた任務前に彼女さんの墓参りッスか?ついこの前も来たッスよね」
「うっせえトビ、黙ってろ」
無機質な石の上に数本の花を置いて手を合わせる。先日摘み取ってきたそれは酷く自分に似つかわしくない。
死んだ彼女が好きだった、ピンク色の花。
一人で来たかったのは山々だが、こんな騒がしい奴でも任務の相方なのだから仕方がない。
「お前は彼女がいねえからわかんねーんだ!うん!」
「あ!酷い!そういう地味に刺さる言葉は良くないと思います先輩!」
新入りだというそいつと組まされたのは、前の相方が任務で死んだから。
喧嘩仲間ではあったけど、少なくともこいつよりは静かであったしそっちの方が良かったかもなんて。
ぎゃあぎゃあ喚く鮮やかなオレンジ色から視線を外して目を閉じる。
「(今日も行って来るぜ、架音)」
見送ったのはもう随分と前。
犯罪者になった自分を任務で追ってきて、この手で葬る形になった彼女。
「彼女さんの方から地雷に引っかかったんですよね、それなら先輩悪くないでしょ」なんていう後輩のフォローはフォローになり得ない。確かにあの日、彼女は自分の作った爆弾で死んだ。いくら向こうが望んだ結果だったとしても。
最後に言われた“愛してる”はいつまでも耳に張り付いて離れない。
きっとこの先も、ずっと。
「(そういえばな、前の任務でこの花いっぱい咲いてるとこ見つけたんだ!
お前と行けりゃ良かったんだけどな、代わりにオイラが届けるから)」
――だから今は、これで我慢してくれ。
それだけ言って目を開ける。話したいことはたくさんある、でもそれは次会ったときに。
いつかもう一度会ったときに、ゆっくり、二人で。
合わせていた手を離せば、かつてペアだったはずの指輪が左手で鈍く光った。
「彼女さん人気者で可愛かったんでしょう?オレも会ってみたかったなー!
でもよりによって先輩に捕まるなんて……架音さんも大変ッスねえ…」
「うっせーぞトビ!架音もオイラのこと好きだったんだからいいんだ!うん!」
「ハイハイ、ラブラブだったんすよねー羨ましいッスー。
さ、リーダーに怒られる前に任務行きましょ先輩」
「言われなくても分かってる!」
何でお前が仕切ってるんだと言い返しながら立ち上がる。
今日も任務、ふと見上げた空が酷く青くてあの日の空と重なった。
犯罪者になってたったひとつだけ、後悔していること。
――ねえデイダラ、
――暇ならこの本でその花の花言葉、調べてみなさいよ。
たまには永遠も悪くねえのかななんて。
“一瞬”が最も美しいと信じて疑わなかった自分がそう思う日が来るとは思ってもみなかった。
「(帰りにまた、摘んで帰ろう)」
決して永遠に咲き誇ることはないピンク色が徐々に遠ざかっていく。
きっと数日もすれば枯れてしまうだろう。
だからこれからも、君の愛した花を、僕が愛した君に。
“変わらない愛情を永遠に”だなんて、普段は読みもしない本の一文を指でなぞりながら、ただひたすらに泣いたあの日を思い出した。
「やっぱり似合わない」
そう隣で笑った君はもういない
(次に会ったら、君をあの花畑へ連れて行こう)
(そのときには、少しは似合うようになっているだろうか)
END.
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センニチコウ
花言葉:「変わらぬ愛」「不朽」「変わらない愛情を永遠に」
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