HappyBirthday!





『サーソーリっ!』




日課である傀儡のメンテナンス中、何やら大きな箱を抱えて部屋に入ってくる架音。やけに嬉しそうな彼女にこれから面倒なことが起こりそうだという予想は容易につく。

返事もせずに目線だけ向ければ、彼女は目の前にその箱を下ろして座った。




『誕生日おめでとー!』


「…あ?」




何かと思えば。
特に興味もなく、すっかり忘れていた自分の誕生日。

壁に掛けてあったカレンダーを見ればなるほど確かに、今日は自分の誕生日だった。




「そういや今日だったか…」


『やっぱり忘れてたのね。はいどうぞ!』




――ケーキを持ってきたの。

そう言いながら箱を開ける架音。
中には彼女が言った通り、大きなホールケーキがひとつ。




「…俺に食べ物が必要ないのは知ってんだろ」


『必要ないだけで食べれない訳じゃないでしょ?
少しぐらい食べてよね、私頑張ったんだから』


「頑張った?手作りか、これ」


『そうよ』




なかなかでしょうと威張る架音を横目に、まじまじとケーキを見つめる。
イチゴに生クリーム、簡単な飾り付けだがこの出来映えなら店でも普通に売っていそうなレベルだ。
架音はいつもメンバーの食事を担当しているが、お菓子を作っているのなんて初めて見た。




『先食べてもいいけど、結構量あるし後でみんなで食べましょ』


「みんな…って、そんなに盛大に祝ってもらうつもりはないからな俺は……面倒くせぇ」


『それよりねサソリ、問題はプレゼントなの。
サソリが何欲しいかなんてわからなかったから、聞いてから買って来ようと思って』


「お前な……」




人の話を聞けと。ナチュラルに話題を変えた彼女に溜息を吐く。
たかだか誕生日ごとき、と言えば「大切な日でしょ」と返してきた。

ケーキがホールなのは自分と架音だけで食べきれないようにわざと仕向けた様子。
食べないで腐らせるのは勿体無い、かと言って冷蔵庫にこんな目立つものがあったら、好奇心旺盛なデイダラや甘いもの好きなイタチ辺りが何かしら言ってくる。
それに架音が作ったとなれば暁全員が奪い合うに違いない。どう転がっても盛大になる訳で。
にこにこしている架音はどうしても賑やかに俺の誕生日を祝いたいらしい。




『言っとくけどあんまり高いのは買えないからね』


「別にいらねーって……」




誕生日プレゼント。そんなものはガキの頃くらいにしか貰った記憶がない。
もうそんな年齢でもあるまいし、しかしそう言ったところでこいつが諦めるとは思えない。適当に決めよう、そう考えていればふといいことを思いついた。




「そうだな…」




口角を上げれば、入れ違いで架音の顔が引きつる。




『待って旦那、ものすごいS顔……嫌な予感しかしない』


「その予感は当たるんじゃねえか?」




ずいっと架音に詰め寄れば一歩下がる架音。
しかしそうずっとは続かず、壁に阻まれた彼女の両脇に腕をつく。
親指は顎から唇へ。




「ケーキはあんまり食えねぇが…お前なら十分食えるよなぁ…?」


『え…あの……』


「何でもしてくれるんだよなァ?
なんたって今日は俺の誕生日だからなァ…」


『そうは言ってない…!』




ぶんぶんと顔を横に振る。
そんなことしても無駄なことくらい知っているだろうに。

後ろに逃げ場を失った彼女は最後の抵抗で下側に逃げるが意味を成さない。
下は床だって、わかってるだろ。




「拒否権はねェ」


『んんー!』




敵わないのを承知で歯向かってくる彼女の唇を、うるさいという代わりに自分のそれで塞いだ。





HappyBirthday!


(ふーん…誕生日ってのも悪くねーな)
(も、もう祝ってあげないから…!)





END.