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――


「ただいまー」


「あらおかえりなさい、やっぱりイタチが行って正解だったわね!」


「はー…疲れた」




家に着くなり堪らず玄関に雪崩れ込む。
出迎えた母が紙袋を運んでいく。その先にある別の紙袋はおそらく兄の分。

「貰いすぎて疲れるなんて幸せね」と笑う母に他人事だから笑えるんだと口を尖らせた。




「オレ、甘いものあんまり食べないのに」


「じゃあオレが食べよう」


「安心して兄さん、言われなくてもそのつもりだから……」




もともと甘いものが苦手。周りもそれを知っているはずなのに、毎年なぜこうなるのか本気で分からない。
兄も兄だ、あれだけ大量に貰っておいてよく追加で食べるとか言い出せるものだ。有難いと言えばそうだけども。

「今年も架音ちゃんに来て貰おうかしら」と、不意に母の口から漏れた単語に反応する。




「架音に?」


「ええ」




――架音。久しぶりにその名前を耳にした。
自分より年上で、兄よりは年下の、近所の女の子。

もともと兄と仲が良かった彼女はたびたび家に来ては一緒に稽古をつけてもらっていた。
毎回稽古を頼んでも断る兄は彼女には甘いらしく、彼女が一緒であれば兄の稽古を受けられた。
最初こそそれが悔しかったけれど、仲良くなるうちに気にならなくなった。むしろ彼女から学ぶことも多かったし、メリットの方が多かった。

才能があったのか見る見るうちに実力をつけた彼女は今はすでに中忍。
任務での活躍を聞く一方で、その姿はめっきり見かけなくなった。




「架音か、全然会ってないや…。任務で忙しいんだろうなー…」


「オレもこの所会っていないな…元気だろうか」


「あの子のことだから上手くやってるでしょう。
私から連絡してみるわね!」


「そんな急に、」


「架音ちゃん甘いもの大好きだから、きっとOKしてくれるわよ」




るんるん駆けて行く母を見送りつつ、そういえば母さんとも仲が良かったななんて。

ちらりと隣を見やれば珍しくぼうっとしているらしい兄。それを見て同じようにぼうっとする自分。
「今から来てくれるみたいよ」という母の声で二人同時に我に返るまで、あと3分。






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