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――
「…よく食べられるよね」
山のように積んであったチョコレートが徐々に消えていく。
前回も思ったことだが、本当にこの二人は飽きずによく食べる。
普段から甘いものを好んで食べない自分には理解できない。最初の30分でギブアップさせてもらった。
二人とも細いのに、どこにこの量が入っていくのか。
『余裕よ!チョコはトップクラスに好きだもの』
「…まだまだだな、サスケ」
「そんなんで褒められても嬉しくない!」
もはや呆れるレベル。見ているだけでお腹いっぱいだ。
口の中が甘ったるくて仕方ない。
『一日で全部食べるのももったいないし、今日はこれぐらいにしましょうか』
「まだ食べられるの…!?」
「ごちそうさま」と残りを袋に入れ直す架音。そうだなと兄も片付けを始める。
放っておけば全部食べるらしいから恐ろしい。
片付け終わって数分。
「少しは読んだら」と、架音はご丁寧に一枚一枚取り出した手紙をひらひらさせた。
「…いいよ。返す人の名前が分かれば、それで」
『まあこんなにたくさんあれば気持ちも分かるけど…読んであげたら女の子も喜ぶわよ?』
「……向こうが勝手にくれるだけじゃん」
『それは言ったらおしまい。何よ、好きな子でもいるの?サスケ』
「えっ……」
いないなら読んであげてもいいでしょとオレの代わりに勝手に手紙を読み出す架音。
ほらやっぱり本命じゃないと笑う彼女を見る限り、先程の質問は大して意味を成さないらしい。
――好きな人。
目の前に、いるけど。
『これくれた女の子、きっと一人残らず緊張したと思うわ。手紙書いた子だって、みんなサスケに読んでもらいたくて…一生懸命だったと思う。後でいいからちゃんと読みなさい、サスケ』
「……分かったよ…。
……なあ、架音はさ」
『ん?』
「……、何でもない」
喉まで出かかった質問を呑み込む。
――好きな人、いないの?
その答えがイエスだった時の、心の準備が足りなかったから。
『…そうだ、こんなときに悪いんだけど』
「?」
架音がごそごそと自分の荷物をあさる。
取り出したのは、今日はもう見飽きたラッピングされた小箱。
またそれかと溜息を吐く。
「…まだあったの?もうオレ食えないよ?」
『要らないならいいわよ?イタチにだけあげるから』
「……え?」
『ハッピーバレンタイン。これは私から』
「…!!」
見飽きたと思っていたはずのそれが、急に何か別のものに見えた気がした瞬間だった。
ある年のバレンタインデーにて。
(はい、イタチ)
(ありがとう)
(お、オレもオレも!)
(サスケはもういらないんじゃなかったか?)
(さ、さっきのは違くて…!)
(ふふ、はいサスケ)
(やったあ!)
(…サスケ、ちょっと来い)
(なーに?兄さん)
(…架音はやらないぞ?)
(……望むところだ!)
END.
2010.2/14
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兄弟が好きです。サスケは一生懸命だといいと思います。
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