チョコよりも甘い

 




「ただいま」




任務が終わって帰宅する。帰宅というには語弊があるかもしれないけれど。
半同棲している彼女の家に数日ぶりに押しかけた。

まさかS級犯罪者のオレが、こんな木ノ葉の里にある一軒家に通いつめているなんて誰も考えまい。




「…?」




いつもしてくれる出迎えがないことに首を傾げる。
寝ているのかとも思ったが、奥から小さく聞こえる鼻歌と漂ってきた独特の甘い香りがそうじゃないことを物語っていた。




「(チョコレート……)」




甘ったるい香りはそれ以外考えられない。なぜだろうかと考えている最中に思い浮かんだのは道中通りすがった店に並べられたカラフルなお菓子と浮ついた空気。
その時はなんとも思わなかったが、なるほど今日の日付から考えれば。ひとつの答えにたどり着いて口角を上げる。

未だに「おかえり」とすら返さない架音はこちらに気付いていないに違いない。
ゆっくり、気配を消して彼女のいる部屋へ向かう。


何やら作業をしている最中の彼女を、瞬身まで使用して後ろから抱き締めた。




「架音」


『きゃっ!?』




予定通り、架音が驚きの悲鳴をあげる。
カシャリと調理器具が音を立てた。




「フッ…甘いな架音」


『ににに兄さま…!』


「オレへのやつか?」




――バレンタインだろう?
そう問えば焦りながらも素直に頷く彼女。




『…、見られないようにしたかったのに……。』


「フフ…別にいいだろう?」




どうやら秘密にしておきたかったらしい架音が少しむくれてみせる。
軽く笑って返せば「もう」とさらにむくれた。




『バレちゃったなら仕方ないか…。
今ね、ちょっと味見しようと思ってたの。兄さまも食べる?』




トレーに並べられたチョコレートのうち一つを手にとって口に含む彼女は、続けてその隣のチョコレートを指差す。どうやら食べてもいいらしい。

ならば、と手を伸ばす。
しかしその行き先はチョコレートではなく、口をもごもごさせる架音。


完全に油断していた彼女の体をくるりと反転させ、そのまま口付ける。




『…んん!?』




突然のことに隙だらけの架音。
舌を割り込ませれば簡単に侵入に成功して、キスはだんだんと深いものになってゆく。




『んっ、ぁ……ふ…』




漏れる吐息は、甘かった。


限界とばかりに架音がオレの胸を叩いて、ようやく唇が離れる。
とろんとした顔がボウルの中で溶けてるチョコレートみたいだ、なんて目の前の彼女を見てふと思った。




『……、兄さまのばか…』




真っ赤な顔して何を言うのかと。
誘ってるのかと問えばそんなんじゃないと顔を背けられて。




『チョコ、全部持ってかれた……。』




――なんだ、そういうことか。

オレが笑って謝ると架音はまたむすっとむくれて、でもそれが可愛くて。
素直に抱き締められた架音の唇にもう一度軽く口付ければ、まだほんのり甘かった。







そんな二人の関係



(はい兄さま、ハッピーバレンタイン!)
(ありがとう架音)
(大好き!)
(オレは、愛してる)
(……、愛してる)







END.


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「お前の方がずっと甘い」とか入れると簡単に裏へ突入するアレ

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