君色プレゼント
「ゼルダ、ちょっといいか」
ああ、またか。
聞き慣れた声と聞き飽きた台詞に、私は一瞬だけ止めた動作を再開した。
「ええ」
ガタ、と音がして私の近くにいた人物が立ち上がる。
足首まであるロングスカートを揺らしながら、呼んだ声の主とともにこの休憩所を出て行った。
『……はあ』
飲んでいた紅茶のカップを置くと同時にため息が漏れた。
誰もいなくなったせいか、無駄に大きく聞こえる。
幸せが逃げるだなんて言うけど、つかずにはいられない。
最近、あの二人は仲がいい。…のかは分からないが、よくああして二人で何かしているのでそう見える。
いつも決まってゼルダだけが呼び出されているのだ。
二人で何をしているかなんて知らないけど、先程ゼルダを呼んだ人が気になっている私としては、それが少なからず近頃の憂鬱の要因になっていた。
『……(リンク…)』
ゼルダを呼んだのは、間違いなくあの人。
いろいろな世界の人が集まる“この世界”。
ゼルダとリンクは同じ世界から来ているから、仲が良くても別におかしくはない。
二人とは別の世界から来た私は、あの二人がどのような関係なのか詳しく知らない。
ゼルダがお姫様でリンクが勇者ということは知っているが。
今日はクリスマス。
一緒に入れたらいいななんて夢見てたけど、いつものようにみんなでパーティーをして終わるんだと思う。
それでも別にいいのだけれど、特別な日だからかなんとなく欲張りたくなった。
でも考えてみてふと思う、どうせ一緒に過ごすなら私となんかじゃなくて、ゼルダみたいな美人さんの方がいいのではないかと。
悔しいけど私はあんなに綺麗じゃないし、リンクとも不釣り合いな自覚はある。
あの二人の方がお似合いだと思う。
そんなことを一人で勝手に考えて勝手に嫌になり、カップに入った紅茶を意味もなくぐるぐるとかき混ぜた。
映りこんでいた自分の顔がぐちゃぐちゃになっていく。
手を止めてだんだんと元に戻ってきた頃、自分以外の影がそこに映った。
「ここいいか、レン」
『……! アイク』
上から聞こえた低い声に驚き顔を上げる。
私の座っていた二人席の向かいにその人は座った。
紺色の短髪に重たそうな剣。
無愛想で見た目は少し怖そうだけど、中身は優しい人。
アイクとも来た世界は違うが、ちょくちょく話しかけてきてくれるのでよく喋る。
「どうしたレン……何かあったのか?
俺の気配に気付かないなんてな、お前にしては珍しい」
『あはは…、なんでもないよ……。
……大乱闘帰り?』
「ああ、軽くシャワーを浴びてきた」
そう言った彼は、12月だというのにたいして厚着でもなく、髪も乾かしていないのか濡れていた。
彼が肩にかけていたタオルで拭いてやる。
『もう、風邪でもひいたらどうするのよ』
「……はは、悪いな」
「───レン!」
突然バタン!と騒がしく扉が開く。
アイクの髪を拭いている途中の状態で、二人してそちらを振り返った。
「……、…あ……ごめん、邪魔したかな…」
少し申し訳無さそうに部屋に入ってきたのは、先程出て行った想い人。
その人を見たアイクの目が、一瞬だけきつくなった気がした。
『……、リン…』
「…行って来い、レン。
片付けはやっておくから」
『え、でも』
「レン…、ちょっといいか?
悪いなアイク、邪魔して」
「別にいい…。
休憩するのに偶然立ち寄っただけだ」
「…そうなのか?
とりあえずレン、すぐ終わるから来てくれ」
『え、ちょっ……リンク…!?』
アイクが勝手に会話を進める。
髪を拭いていた手を離させ、その手からタオルを奪い取った。
珍しく不機嫌そうな声色に焦りを感じる。
戸惑ってる間に今度はリンクに腕を掴まれ、若干強引に、私は部屋から連れ出された。
──
「……レンってさ、アイクのこと好きなの?」
『え…!?』
手を引かれつつスタスタと廊下を歩く。
どこに行くのかはよく分からないが、大人しく着いて行った。
繋がれた手が熱い。
嬉しい反面で、アイク同様不機嫌そうなリンクに焦りを隠せない。
突然降ってきた質問にさらに動揺する。
『な、なんで…!?』
「だっていつも一緒にいるだろ、さっきもそうだったけど」
『あれは偶然アイクが大乱闘の帰りに…』
「ふうん……」
リンクが立ち止まった。
横を見れば、彼の部屋。
「結局、レンはアイクのこと好きなの?」
『え…、た、確かに好きは好きだけど……リンクが言う好きとは違うと………』
「友達として、好き?」
『…う、うん……』
「………そっか」
さっきまで不機嫌だったのが嘘のように、リンクが嬉しそうに笑った。
ドキン、と心臓が音を立てる。
『そういえばリンク、用って……?』
「ああ、
ここじゃアレだから…部屋、入ってくれ」
『う、うん』
ガチャリとリンクがドアを開ける。
ふわ、と風が吹いた。
リンクの部屋──初めて入る。
『お、お邪魔します』
「じゃ、取ってくるからちょっとそこで待ってて!」
『取ってくる……?』
ドアを閉め、ドアに張り付くように立つ。
なんとなく、玄関から動きづらい。
どこに目をやったらいいのか分からず、壁に視線を走らせる。
リンクは部屋にある机に向かって行き、一分もしないうちに戻ってきた。
手に何か持っている。
それを手の上に乗せ、おそるおそるこちらに差し出してきた。
「……レン、その…、
…メリークリスマス、……これ、良かったら………」
『え』
小さな可愛くラッピングされた箱を渡された。
訳が分からないまま、それを受け取る。
彼のはにかんだ笑顔に、再び心臓が波打った。
『…私に……?』
「うん、…開けてみて?」
綺麗な包装をなるべく破らないように気を付けて開ける。
じゃら、と中に入ってるものを手に取った。
ハート型のプレートがついたネックレス。
『わ、』
「ちょっと貸して、レン」
ひょい、と私の手からそのネックレスを奪い取る。
チェーンを首に回し、後ろで金具をいじってつける。
一気に距離を縮められ、息が詰まる。
自分より背の高いリンクの肩の辺りで、私の視線が彷徨った。
ネックレスをつけ終わり、リンクが離れた後も暫く体が固まって動けない。
「うん、やっぱり似合うな」
固まっている私をよそに、リンクは満足そうに笑った。
『あ、ありがとリンク……、いいの、こんなの貰って』
「何言ってんだよ、いいに決まってるだろ!
オレが似合うと思って買ったんだから!
………あのさ、レン」
『?』
「その……、レンは、アイクのこと…友達としてしか見てないんだろ…?
……じゃあさ、…他に好きなやつとか、いるの……?」
『…!』
先程の笑顔をすべてしまいこんで、リンクが部屋に二人だから聞こえるくらいの声で話す。
こんな彼、初めて見たかもしれない。
『………、…
……いる………けど…』
「え!?だ、誰!?」
『誰って…言われても………』
「あ、そ、そうだよな……。言えるわけないよな…。
……レンは、そいつと…今日、過ごすの…?」
『……まさか、』
「じゃ、じゃあさ………」
心臓の音が、さっきよりも煩い。
鼓動も速い。
リンクに聞こえてたら、どうしよう。
でも、余裕がないのは私だけじゃないみたいで。
「……オレと、過ごさない…?」
……ああ、やっぱりだめだ、
「………その、プレゼントのお返しに……さ、
レンの時間、ちょっとでいいから………ほしい、」
心臓、そろそろ、
「むしろ…レンがほし………って、はは、何言ってんだろオレ…」
壊れるかもしれない。
「………あの、もう、分かってるかもしれないけど……」
もし壊れたら、
「………その、」
責任、取ってください。
「……好きです。」
君色プレゼント
プレゼントは君がいいです。
(私の気持ちも、受け取ってくれますか)
END.
-----------------------------
よく意味が分からないですね!
いつものことだった。
そして間に合わなかった。
裏設定として、ゼルダはリンクの恋の手伝いをしてただけとか
アイクはヒロインが好きだとかっていうのがありました。
機会があれば番外編として書いてもいい気がする。
-----------------------------