卒業おめでとう。
「泣くなって」
『だって』
ポンポン、と頭を軽く撫でられる。
3月。別れの季節。
それは私のところでも例外ではなく、今日卒業式が行われた。
一年前から付き合っている先輩も、明日からは学校に来ない。
一日のほとんどは学校で過ごすから、違う学校というだけでなんだかとても遠くに行ってしまうような気がした。
『…私、一年後追いかけますから』
「ばか、お前ならもっと上いけるだろ」
『だって私……!』
「いいから、レンはレンの行きたいとこに行くの」
ぽんぽん、ともう一度撫でられる。
確かに、私は前に行きたい学校があると言ったけど。
先輩が違う学校に行くと知ってからは、先輩と同じ学校に行きたくなった。
そんなの、受験の動機として不純なのは分かってるけど。
それでも、
『学校で先輩が何してるかなんて、分からなくなっちゃうじゃないですか…』
先輩の行く先は、普通の男女共学の学校。
行った先で、もし私以外の好きな人ができたら。
私の知らないとこで、私以外の誰かと何かしてたら。
決して先輩を信用してないわけじゃない。
それでも、やっぱりどこか心配で。
卒業式の終わり、校舎の周りでざわつく人混みから少しよけた学校の裏、
誰が通るか分からない場所で抱き締められる。
「そんなの、オレも同じだろ…」
『!』
「オレが居ない間にレンが変な奴に捕まってないかとか、変な虫がついてないかとか、襲われてないかとか、心配し出したらキリがないけど!
オレはレンが好きだし、レンしか好きにならないし、レンを信じてるから。
お前はお前の好きなとこに行け、オレのことなんか気にせずに。
オレのせいでやりたいことできなかったら意味ないだろ。な?」
『……はい』
「オレ応援するから。
オレについてきただけ、とかで学校決めるなよ?」
『はい、』
「分かったらはい、ちゅーして」
『……は!?』
「一応今日、オレの卒業式。
お祝いしてくれよ、レン?」
『こ、こんなとこで……!』
周りを見渡す。
話し声だって、姿こそ見えないけど近くからする。
多分この壁の裏とか、そこらへんに人が居るのだろう。
私達の関係は仲がいい人にはばれてるけど。
見られるのは、恥ずかしい。
戸惑っていると、「ん、」なんて早速目を瞑る先輩。
「レンー、早くー」
『せ、せんぱ…っ』
「一瞬だろ、な」
『…っ』
私からするなんて滅多にない。
したとしても頬。
多分、今の先輩は唇を期待してる。
一瞬、確かに一瞬。
さっきからしばらくここに居るが実際に人が通りがかったことはないし、このままいけばこの一瞬くらい、なんでもないだろう。
意を決して。
身長が10センチほど高い先輩の肩に手を乗せて、背伸びをしながら近づく。
ちゅっ。
言われたとおり一瞬、のつもりだった。
『、んんっ!』
唇が重なった瞬間、後頭部と腰に手を回されて抱き寄せられる。
驚いた私をよそに、舌が割って入ってくる。
『ん、ぁ、…っ』
「……ん、」
周囲の雑音で音と声はかき消される。
が、同時に誰がいつ来るか分からない状況でもあった。
焦る私、離してくれない先輩。
幸い、誰も来ない間に、私の息切れにより唇が離れる。
『は…っ!
……ちょっと、リンクせんぱ…っ』
「ごめんごめん、ほんとにしてくれるとは思わなかったから」
『だって先輩が、』
「ほんとかわいいなー、レンは」
『っ、』
ぎゅっ、と抱き締められる。
逃げられないくらい、力強く。
抗議していた私も、先輩の腕の中でしぶしぶ大人しくなった。
最初みたいに頭を撫でられる。
「確かに、今日でオレはここでの学校生活は終わるけど。
オレらは変わんない、そうだろ?」
『…はい』
「学校違うくらいで終わる関係じゃないだろ。
それとも、その程度だった?」
『そんなわけないです、』
「な。
これからも毎日、会えなかったとしてもメールでも電話でもすればいいだろ。
……まあ、オレが会いに行くけどさ」
『はい、』
高音でも低音でもないボイスが耳元で響く。
撫でる手と腕の中のあったかさが、私を安心させる。
「心配しなくても、オレはレンしか見てねえから!
レンこそ浮気とかすんなよ?」
『当たり前じゃないですか!』
私が先輩以外好きになるなんてあり得ない。
ずっと、ずっと。これからも。
『リンクせんぱい、』
「ん?……!」
完全に気を抜いてた先輩に、不意打ちのキス。
『…卒業、
おめでとうございます』
「…ああ、ありがと」
私達の春は、
きっと別れの季節なんかじゃない。
卒業おめでとう。
(学校サボってこっちに登校しちゃおうかなー)
(ちょっと、何しようとしてるんですか)
END.
---------------------
なんかすごいアレだけど麻耶ちゃんへ!
いつリクエスト貰ったか分からないレベルだけどほんとに申し訳ない切腹してきます
---------------------