ガールズマインド
「なあーレン」
『なあにリンク?』
「お前マルスと付き合ってんの?」
『なっ…!』
リビングにいた時、ちょうど大乱闘を終えたリンクに遭遇した。
疲れただろうと飲み物を出し、ついでに自分の分にもおかわりをいれ、リンクの向かいの席に座り直す。
「ありがとう」の言葉を言われてから、少し間を置いた数十秒後のことだった。
“マルスと付き合ってるのか?”
それは本当にいきなりで、一気に顔が熱くなるのを感じた。
『ど…、どうして?』
「いや、ちょっとな。
やけに仲がいいから…気になってただけ」
『そ、そんなことないよ、付き合ってなんて』
「なーに言ってるの?」
「『!!』」
突然ぬっと割り込んできた声の主は紛れもなくマルス。
いつの間に部屋に入って来てたのだろうか、全く気配を感じなかった。
それはリンクも同じだったようで。
「ま、マルス!
どうしてここに?大乱闘は…」
「終わったよ、ついさっきね。レンの声がしたから来たのさ。そしたら…」
「別に変なことなんてしてないからな!?」
「……変なこと?…例えば?」
「た、例えばって…!」
「…ナニを考えてるのかなリンク君、顔赤いよ?どのみち何かしてたらぶん殴るけどね。
それよりも君、今さっきレンに聞いてたじゃないか。僕達が付き合ってるのかって」
「そこから聞いてたのかよ…」
「気になってるんだったら僕から教えてあげよう。
付き合ってるに決まってるじゃないか」
「『!!』」
さらりと言いのけるマルス。
その言葉にリンクが驚いて、私もまた少し違う意味でびくりとした。
「な、でもさっきレンは……」
「恥ずかしかっただけでしょ?ねぇレン」
『…マルス!ちょっと来て!
ごめんねリンク、また後で!』
「え、あ、レン!?」
マルスの服を引っ張って半分強制的に部屋を出る。
呆気にとられた様子のリンクをそのまま取り残してしまったが仕方ない。
互いに一言も喋らないまま廊下をスタスタと歩く。
リンクのいたリビングと距離を置いた場所で、マルスに向き直った。
『ちょっとマルス、みんなには内緒だって言ったでしょ!』
その鼻先を指さしながら彼に言う。
主語は言わなくてもマルスにはわかるだろう。私たちが付き合っていること、だ。
付き合ったその日にマルスにはそう言って、彼も頷いていたはずなのだけど。
「まあね。でも最近、君の周りに邪魔なムシが多いからさ。除けるにはちょうどいいでしょ?」
『でも…!』
「もういいんじゃない?バラしても。
リンクみたいに薄々気付いてる人だっているよ。なんでそんなに…」
『……嫌なの!』
「…どうして?
そういえば約束した時には理由教えてくれなかったよね。そろそろ教えてくれない?」
『それは…、』
約束したときに聞かれた。
――“何でだめなの?”
そのときは、「だめだからだめなの」と。マルスは笑って「わかったよ」と流してくれた。
付き合ってるなんてあまりおおっぴらにするものではないと思ったし、恥ずかしい気持ちもあったから。
いつかはバレるだろうと思ってても、それまではなるべく秘密にしておきたかった。
それは最近でも同じだけど、付き合い始めてからもうひとつ、バラしたくない理由ができた。
『私はマルスに似合う女になりたいの!』
「…は?」
あまり聞かない彼の間の抜けた声。いつもなら笑ってるところだけど、今はそれどころじゃない。
『なによ、悪い!?笑わないでよね、私だって一応女の子なの!
彼氏の隣にいて恥ずかくないような女になりたいの、特にマルスは美形なんだから、尚更』
「…十分でしょ、レンなら。それに僕は別に何か言われようと…」
『駄目なの!』
「!」
『…もう!とにかく私はそれじゃ嫌なの!
私がマルスの彼女ですって堂々と言えるぐらい可愛くなって、そしたらみんなに言うの!』
それだけ吐き捨ててその場を後にする。
「乙女心は難しいね」なんて、呆れたような声が後ろからした気がした。
ガールズマインド
(フクザツ。)
END.