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不意に感じた光に目を覚ます。
原因が横に転がっていたケータイだとわかったと同時にそれを手にとった。
午前3時、目をこすりながら画面を見れば見慣れた宛先からのメール。
《起きてたら、電話ちょうだい》
全くと言っていいほど頭は働いていないのに、指が自然と動いて電話帳を立ち上げ始める。どうやら体が覚えてしまったらしいその動作は何十回と繰り返してきた。
『もしもし?』
「…レン、どうした」
『……声聞きたくなっただけ』
“ごめんね、オヤスミ”
それだけ聞こえて、目に入った通話終了画面に意識が遠のいていく。
次に目を覚ましたのは、耳元で響くアラーム音に驚かされた3時間後のことだった。
――
学校での授業。いつも通り俺はぼうっとしていた。
ノートこそとっているものの、先生の話は不思議なくらい右から左へと流れていく。
この頃は机の中にケータイを忍び込ませるのが日課。
《今何の授業?》
《英語だ、レンは?》
《生物》
先生にバレないようにメールの送受信を繰り返す。お相手は違う学校に通っている彼女。
気がつけば授業が終わっていた、そんなこともしばしば。
《じゃあ次わたし体育だから》
《わかった、頑張れよ》
《ありがと》
“また後で”と短い文章を打ち込みながら浮かぶのは気だるそうな彼女の顔。一番苦手な授業だと聞かされたのは何も一度や二度ではない。
送信完了を確認してケータイを閉じようとすれば、ふと待受画面のカレンダーが目に入った。
「(……10日)」
ちょうど両手の指の数。もうそんなに会えてないかと思うと悲しくなった。
もとはと言えば、部活が忙しくなってしまった自分のせいなのだけれど。仕方ないと言えば仕方ないが、今までなら一週間に一度は会っていたのに。それ以上空いたのは付き合ってから初めてで。
「(…レンは)」
どう思っているのだろうか。何を考えているのだろうか。
少しは俺のこと、なんてまたぼうっとする。
電波の先には居るのだろうけど、手には無機質な携帯電話がただあるだけで。
言葉も、レンが打ったと言えどコンピュータ文字の羅列以外の何ものでもなくて。
俺も電波と一緒に飛んでいければいいのに、なんて。
「(……あ)」
ふととあることを思い出して、いじるのをやめたケータイを再度取り出す。
夜中に電話があったような気がする、
寝惚けていて記憶が曖昧だが、ケータイの履歴を見れば。
「(あった、)」
着信履歴と午前3時のメール。確かにそれはデータとして残っていた。
あれは夢ではなかったのかと自然と口角が上がるのを感じる、普段無愛想だと言われる自分もレン関係になった途端こうだ。
授業中にニヤニヤする奴のすることなんてロクなことじゃない。
このままだとバレてケータイ取り上げなんてことになりかねない、慌てて口角を戻して平然を装う。
と、不意に画面が切り替わった。
《体育終わったよ》
《お疲れ》
鐘の音を聞きながら、机の中のケータイをカバンに放り込んだ。
――
最後の授業が終わって、いつも通り部活の準備をする。
今日も放課後は6時まで部活。俺の大学からレンの家までは1時間以上かかるから、彼女の予定を考えればまた今日も会えない。
ため息をつきながら、今から部活だと連絡しようと先程のレンからのメールを開いて返信ボタンを押そうとした。
「……ん?」
ふと、画面に違和感。メールの下に本文終了の“END”の文字がない。
不思議に思ってスクロールして、レンの本音を見つけた。
《ありがと、今日もアイクは部活?
会いたい》
黙ってメールを閉じた俺は、気付けば先輩のメアドを電話帳から探し始めていた。
5センチ。1
(俺だって、)
END.