計画範囲外
『フォックス』
「!」
コンコンとノック音が響く。
ドアの外から聞こえる、聞き慣れた声。
『私よ。入ってもいいかしら』
「お、おう」
跳ね上がる心臓。
なんとか動揺を隠し、“自然”を振る舞う。
数秒後、ガチャリとドアが開いて声の主が入ってきた。
小柄な少女が一人、姿を現す。
自分がよく知っている人物。
レン――大乱闘メンバーの一人だ。
「ど、どうしたんだ?」
大体わかっているが、あえて聞いてみる。
声が震えてるのがばれないことを願いつつ。
今日はいわゆるバレンタインデー。
主に女の子が好きな人にチョコを贈る、とかいうイベント。
でも最近では友達同士で贈り合うのが流行っているらしく、レンもここのところ、ファイター全員にあげるようになってきた。
ピーチやゼルダなどの女性陣も同様。
毎年この日には、みんなでわいわい盛り上がる。
今回はそれを逆手にとって、あえて自分の部屋にいることにした。
他のメンバーと同じ場所にいると、手渡しとお礼、という一瞬でこの一年に一度のイベントは終了してしまう。
部屋にいれば、渡すには直接部屋に来るしかない。
更に自分が部屋の真ん中あたりにいれば、レンは部屋に入ってくるしかない。
これで必然的に“二人きり”という状況を作ることができる。
他の人が来たのなら、声で判断して入り口付近で対応すればいいこと。
そしてその計画通りにレンは部屋に入ってきた。
後はその時間を、自分がどれだけ持たせられるか。
そこが勝負、だ。
『バレンタイン。チョコ渡しに来たの』
手に持っている紙袋を、自分に見えるように前に出す。
中に入っている、きれいにラッピングされたお菓子が顔をのぞかせていた。
部屋の真ん中あたりに座っている自分は、いつも使っているブラスターの手入れのフリ。
さすがに何もしてないで、理由もなしに真ん中にドカッと座っているのはどうかと思ったからだ。
チョコを渡すために、レンは自分の方へとやってくる。
これも計画済み、のこと。
『はい』
「あ…ありがとう」
目の前にしゃがみ込んで、袋を手渡される。
震えた手で、だけど落とさないように、それを受け取った。
さて、ここから時間稼ぎをどうやってするか。
とりあえずチョコをこの場で開けてみようかと計画していた。
それを実行しようとしたとき、その場から動かずに一直線に自分を見てくるレンが視界に入る。
視線がチョコからレンへと変わった。
『……フォックス…』
「…?」
レンの視線は、やけに切なげだった。
『……
嫌だったら…突き飛ばしていいから……』
「え…
………!!?」
チョコを持つ手をぎゅっと握られた後、体にのしかかる体重。
後ろに回された腕には、力がこもっていた。
近くにあったブラスターが、カシャンと小さく音を立てる。
ふわりと香る甘い香りに動きも思考もフリーズする。
他に何かを考えられるほどの余裕など、もうどこにもなかった。
『…ごめん、フォックスが優しいの知っててやってる。
もう少しでいいから…このままでいさせて』
「レン、」
『それと、今から言うこと…聞き流していいから』
レンが自分の肩に顔をうずめているので顔色が伺えない。
逆に、レンも自分の顔色は伺えないだろう。
今はとてもではないが、見られたくはない。
“聞き流して”……そう言った彼女は、ぽつりぽつりと言葉を紡ぎ始めた。
『……フォックス、好き…。
ほんとなの…。私は人間だけど…気づいたら好きになってた…。
きっと私のことなんとも思ってないだろうし、これからも普通の関係でいいの…。
せめて友達でいさせて……。』
静かな部屋だからこそ聞こえるくらいの小さな声。
だけど、すぐ隣にいた自分には全てを聞き取れた。
最後に一回きつく抱きしめたあと、レンが離れる。
『ありがとう。言えて良かった…。
ほんとに、気にしないで……』
彼女は切なく微笑んだ。
ドアに向かって歩いて行こうとする彼女に、はっとして声をかける。
「レン!」
『…?』
急いで引き止める。
不思議そうに、彼女は足を止めて振り向いた。
予定も計画もしていなかった状況に、その場で必死になって言葉を考える。
──落ち着け、自分がずっと夢見てきた場面じゃないか。
「…お……、
俺は、レンと…友達関係以上になりたいって…思ってるから…!」
『…え?』
「だから……その…!」
ぎゅっと目を瞑る。
もう、計画も何もない。
言うことはひとつだけ。
ここで言わなかったら、いつ言うんだ。
「……つ、付き合ってください!」
計画範囲外
夢見てたから計画ゼロ。
(…聞き流してなかったの)
(聞き流す訳あるか!)
END.
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い、意味がわからない(・∀・;
眠い頭で書いてたからか…。
てかバレンタイン過ぎてるし!
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