星空散歩

 



「なあレン!綺麗だろ!」




満天の星空の中、ピジョットを飛ばして夜の散歩へ。

まるで自分のもののように、輝く一面の星空を目の前の人物に自慢げに見せる。


ここのところ忙しそうで元気のない彼女を、オレは無理やり引っ張りだしてきた。




『綺麗だけど…グリーン、私…』


「今は勉強のことなんか忘れろって!オレも仕事サボったし」


『ちょっと』




「だめでしょ」、なんて真面目な彼女が言う。
レンは真面目すぎるんだ、そんなに切羽詰まってたらいつか絶対どこかでダメになる。

…なんて勝手に考えてるオレは、きっと今彼女にとっては邪魔な存在なのだろう。




「でもまじで、たまには息抜きも必要だぜ?」


『そうだけど…グリーンは、サボりすぎ』


「うぐっ………」




図星をつかれて何も言えなくなる。確かにオレ、ここのところよくジムを抜け出している気がする……誰だよ、レンに言ったやつ。
でも原因はお前なんだけどな、なんて言えずに口を閉じる。お前で頭いっぱいで、仕事に集中できねえんだ。



話を逸らせようとして、「いいから今は楽しめよ」とかっこつける。言った割に楽しんでるのはオレの方だが。
目の前のレンの温度に気持ちが高まっているのは確かだ。
なんせ、こいつはオレの大好きな人だから…未だに絶賛片思い中だけど。

そんなオレに、頷きつつも呆れたように息を吐くレン。




「で、レン、どう?綺麗だろ?」


『うん、綺麗ね』


「…怒ってる?」


『そんなことない。珍しく気が利いてるグリーンに驚いてるだけ』


「え、なんだよそれ」


『そのまんまの意味よ』




くすくす笑うレン、何かイヤミ言われた気がするけど、レンが楽しそうだからいいや。


そう油断したのもつかの間、「この後どうするの?」と聞かれて、思わずオレの動きが止まった。




『…もしかしてノープラン?』


「……うん」




「そう」、なんて苦笑いされた。
まずい、星見せる以外何も考えてなかった。




「……ごめんレン、オレ、そこまで気回らなくて」


『いいわよ、楽しかったから』


「…ほんと?」


『うん。
……グリーン、わたしのために考えてくれたんでしょ。それだけで嬉しい。
わたしも、こういうこと一回してみたかったし…グリーンと』


「え」




「危ないから」と理由を付けて座ったレンの後ろ、レンの表情は見えるはずもなく。
ただ、オレにとっては今の言葉だけで十分だったようで、一瞬で顔が熱くなった。


預けられたひとまわりもふたまわりも小さな背中、風景は180度星空。
オレにとってはほぼパーフェクトなシチュエーション…そこにそのセリフは、その、反則だろ。




「(なんでオレがドキドキさせられてんだよ…!オレはレンに、)」


『ありがとグリーン、元気出た!私、頑張る』


「お、おう…って、あんまり無理すんなよ」


『分かってる。それとグリーン、仕事サボっちゃだめよ』


「…おう」


『あと、』


「ん?」


『来年もまた、見に来たいな』


「…!」




追い討ちをかけるようなレンに、顔がまた一段と熱くなった。
もうオレにはレンが振り向かないよう祈ることくらいしかできない。
この後とどめが来るなんて、この時のオレは知りもしないだろうけど。



七夕の夜、ひとつ、願いがかなった気がした。
また来年も、きっと。







オレがお前を連れ出して、






(…グリーン、来年はちゃんとデートコースくらい決めておきなさいよね)
(!!? デート!?)
(あれ、違ったの?てっきり)
(……っ!)




END.