ビコーズ・アイラブユー
相変わらず今日も静かな机の上のポケギアを見つめる。
それもそうだ、登録してる人なんて両手で数えても余るくらい。
しかもみんなジムリーダーとか博士とか、忙しくて滅多にかけてこないような人たちばっかり。
着信履歴を開いて眺める。
2日前、グリーン。暇だったからかけてきたらしい。特に用事もなかったのに、私は暇じゃないんだけどと言って切った記憶がある。悪いことした。でもかけ直す気はない。
その前は…横に一週間前と表示された名前を見て、視界が潤んだ。
一週間、連絡もなしだなんて。
夕焼けが染み渡る部屋で一人うなだれる。
思考はどんどんネガティブ方向。
そして突如鳴り響くポケギアの音に飛び起きた。
画面の名前に少しがっかりする。なんて、失礼だけど。
……グリーン?
『もしもし……』
「ボンジュール、レン!今暇か?この前切ったのってレッドとデートか何かか?悪かったな!」
『………』
私とは反対に元気な声のグリーン。
沈んでる原因の名前が出てきて余計に沈む。
こういうのが空気読めないっていうんだろうなと思ったけど、彼は何も知らないんだから仕方ない。
何も答えない私に、ポケギア越しのグリーンが焦り始めた。
「え?レン、どうかしたのか…?」
『…っ、ごめん、』
「え?何が?」
『いいの、とりあえず聞いといて。ごめんグリーン、
……家、来れる?』
「は?…い、いいけど……」
誘った側のグリーンが焦る事態。
それもそうだ、私から家に誘うなんて初めてだ。
戸惑ったような声で通話を終了させる彼、
多分、30分もしないうちに来るだろう。
もう、いい。
再び静まったポケギアを握り締める。
一週間会えないならまだしも、連絡ひとつくれないなんて。
ばか、と独り言のように言う。
さっきと同じように机に突っ伏す。
グリーンが来るのをただひたすらに待った。
しばらくして、もう一回ポケギアが鳴る。
グリーンからの連絡だろう、そう思って何も見ずに通話ボタンを押した。
『もしもし』
「……レン?」
『…え?』
…グリーンじゃない。
落ち着いた声色に戸惑った。
『…レッド……?』
「ねえ、さっきグリーンと会ったんだけど、どういうこと?
レンの家に向かってるとか言ってたけど、まさか誘ったの?」
『……え、…うん、』
一週間ぶりに話したレッドはやや不機嫌だった。
特に否定をしない私の返事にさらにそうなったようで、声に苛立ちが混ざる。
「…レン、家に一人でしょ?
僕に何も言わずに男あげようとしたわけ?」
『………そうだけど?』
「……」
レッドの苛立ちがこっちにも伝わって、若干挑戦的な返事を返してしまった。
途端、無言になるレッドにしまったと思うがもう遅い。
「………わかったよ、じゃあ好きにすれば」
『……っ』
突き放すように言うレッドに先ほどの返事を後悔した。
一週間ぶりに話せて嬉しいはずなのに。
こんな会話がしたかったわけじゃない。
やけに冷たいレッドに枯れたと思ってた涙がボロボロ出てきて、声を出そうと開いた口に入ってしょっぱい。
『だって、…レッドが、私のこと、ほっとくから………!』
声が震えて、うまく伝わったかわからない。
でも涙は止まる気配がなくて、机に溜まっていく。
たかが一週間。
放っておかれたかも微妙な期間が私にとっては大きかった。
何かあるなら、連絡がひとつでいいから欲しかったんだと思う。
今まで3日に一度は連絡を取り合ってたから。
「……ごめん、…泣かないで、レン……」
そう言ったレッドの声にはもう苛立ちはなかった。
会いたい。
レッドが挑戦者の相手で忙しいのは知ってる。
伝説のトレーナー、世間ではそう知られてるから。
会いたくて仕方ないけど、シロガネやまを登り降りするのは大変だとわかってるから言えなかった。
こっちからの連絡も、迷惑になるかもしれないからしなかった。
『…会いたいよ、レッド……』
椅子の上で丸まって、ベッドに置いてあったピカチュウのぬいぐるみを抱きしめる。
一週間前、通話したときからの本音。
そのとき、それをかき消すかのように家のインターホンが鳴った。
『あれ、グリーン……?』
「………出てみれば」
そうだ、グリーンがこちらに向かってるんだった。
もう時間的に家についてもおかしくない。
目腫れてるかな、なんて考えながら涙を拭う。
心配されちゃうかな、グリーンはなんだかんだ優しいから。
ぶっきらぼうにも聞こえるレッドの声を聞きながら、階段を下りてドアを開けた。
『いらっしゃ、…』
「……ごめんレン、
………会いたかった、」
夕焼けと一緒に視界に飛び込んだのは、綺麗な赤色だった。
ビコーズ・アイラブユー
ぜんぶぜんぶ“すきだから”
END.
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レッド氏はポケギアが壊れて直しに行ってて
連絡が出来なかったと供述しております。
グリーンのその後はご想像にお任せ…。
PS.グリーンごめん
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