1
彼なら乗ってくれるだろうな、とは思っていた。
「クリスマスパーティー?」
『そう。25日の授業終わったらさ、わたしの部屋に集まって……』
「や、やる!! 行く!! 絶対!!」
前のめりになったペパーが、強く拳を握ってこちらを見つめてくる。その目はキラキラしているというよりかはギラギラとしていた。やる気は十分だ。
この学校に来て初めての冬休みを迎えようとしている頃。世間はちょうどクリスマスを迎えていた。
せっかくだし何か楽しいことをやりたいと思い企画した“クリスマスパーティー”。といっても普通に学校の授業があるので、やれることは限られているけども。
ちょっとでもいいからいつものみんなでわいわい騒げたらいいな、と思っていた。プレゼント交換をするとか、ホールケーキを食べるとか。あいにく、大きなツリーは寮の部屋には用意できないけども。
「パーティーといえばごちそう……か!? オレが特別な料理を用意するぜ!!」
『それなんだけど、ペパーにお願いするか迷ってて……授業もあるし大変じゃない?大丈夫?』
「大丈夫大丈夫!仕込みなら事前にできるし!ペパーお兄さんに任せとけ!!」
『…ありがと。じゃあペパーにお願いしちゃおうかな……買い出しとか準備とかあれば手伝うからね』
食材のお金も出せるし、と言ったら「オマエはバトル負けなしだもんな…」と彼が苦笑いして呟いた。
トレーナー同士のポケモンバトルでは基本的に賞金が出るからねえ。資金源はチャンピオン様に任せておきなさい。何ならネモもいる。
ちょっとお高いお肉でも珍しい調味料でも、私に買えるものなら全部買ってあげよう。
「こういうのって、でっけえケーキも要るか?何味がいいかな…。…待てよ、そもそもオレが考えてる料理ってクリスマスパーティーにふさわしいのか?分からなくなってきた……」
『不安なら、メニュー考えるの手伝うよ。ペパーってケーキも作れるの?』
「そんな凝ったのは無理だけど、一応な。あんまり作る機会ないから失敗するかもだけど…。…ごめんな、大口叩いといて……」
『あはは、謝んないでよ。わたしはいつものサンドウィッチでも十分ごちそうだよ』
――ペパーの料理は何でも美味しいからね。
いつも思ってることを改めて口に出したら、ペパーが照れたように眉を下げて頬を染める。お世辞抜きで彼の料理は美味しいし、デザートにケーキを作ってくれようとしてるならメインの料理はいつものサンドウィッチでも全然構わない。そんなに準備の時間も取れないだろうから。
並んで歩いていたペパーが急に私の腕を取ったかと思えばそのまま足を止めたから、つられて私も立ち止まった。
『ペパー?』
「……レン、ひとつワガママ言ってもいいか?」
『うん、いいよ?』
「クリスマスパーティーの後、オレに時間くれねえか?
みんなでパーティーすんのは本当に楽しみなんだけど、……オマエと、二人になる時間が欲しくて。オレ、まともにクリスマスらしいことしたことねえからさ…レンと二人のパーティーもしてみたくて……」
ぎゅっと腕に抱き着いてきたペパーを見やる。頭をこちらにもたれているので表情は見えない。
ボリュームのあるふわふわの髪の毛が、私の頬を掠めた。
「ネモもボタンも大事な友達だけどよ、やっぱりオレにとっては、オマエが一番特別だから…。
レンも二人のこと大事だと思うけど……オレと、一緒に過ごしてほしい…」
「プレゼント用意するからさ」と弱々しく呟く彼に、そんなことしなくても頷くのになあ、と思いながら。
人一倍ヤキモチ焼きな彼の頭をぽんぽんと撫でる。
『そんなの、わがままのうちに入らないよ。
次の日もあるしそこそこの時間に解散すると思うから、解散後にもう一回、わたしの部屋においで』
「…!! おう!!」
顔を上げたペパーがぱあっと目を輝かせる。
「レン大好き!」と引っ付いてくる彼を「はいはい」といなしながら、次の授業が行われる家庭科室へと歩を進めた。
――