うまくいかない

 



『ねえロイ、ほんとにわたしのこと好き?』




何の前触れもなく彼にそう尋ねたら、彼はわかりやすくぽかんと呆気にとられたような顔をした。




「なんで?好きに決まってるじゃん」


『ほんとに?』


「うん。え、なんで?」




心底不思議そうに首を傾げる彼と恋人同士になったのは半年前。

告白は彼からだった。いつも無邪気に笑っている彼は誰とでも仲が良くて、それは私も例外ではなかった。
だから私だけが特別な目で見られているなんて思ってもいなくて、告白されたときはとても驚いた。
密かにロイに片想いをしていた私は、もちろんそれを喜んで承諾した。


あれから半年。
私達は何をしただろう?

確かに付き合ってからは二人でいることが多くなった。
一緒に出かけたり、二人だけで食事をしたり。
手を繋ぐのは彼からで、ハグを強請るのは私から。
最初はそれだけで幸せだった。そう、最初は。




『もう付き合って半年だよ?』




半年経った今でも、半年前から何も変わっていない。そのことに私は不満を覚えていた。


デートこそすれど、ハグ以上のことをしたことはない。
彼が他の女性と仲良さそうにしていたら私は妬くけど、私がリンクやマルスと親しくしていても彼にその素振りはない。

ロイの中で“恋人”とはどんな人のことなのだろう。
友達の延長、親友よりも更に親しい人。その程度の存在なのではないだろうか。
最近、本気でそう思うのだ。




『ロイにとってわたしはどんな人間なの?』


「そりゃもちろん、大事な人だよ」


『(…ああ、)』




納得。
純粋な彼らしい言葉に酷く納得した。
そして同時に諦めに似た感情を抱く。

大事にされている。実感があるし、とても嬉しかった。
ただ、私が今感じている物足りなさはそれとは完全に別物なのだ。
この人に今以上を求めるのは間違っているのだろうか。恋人なのだから普通ならおかしくないはずだけど、ロイにそういうことを求めるのは無理があるのだろうか。


大事な人と言われた以上、「そっか、ありがとう」としか言い様がない。
続ける言葉が見つからずに黙って下を向いていたら、不意に手を重ねられた。




「…レン、俺に何かされたいの?」


『え、』




顔を上げたら、やけに真剣な目をしている彼と目が合った。




「半年経つのにキスもしない俺に怒ってんのか?」


『あ、…いや……』


「…していいの?」




どくり、心臓が波打った。
まさかこの人に自覚が有るだなんて、夢にも思っていなかった。

徐々に距離を詰められて、ロイの片手が私の頬に添えられる。
熱っぽい目で見つめられて、私はただひたすら頷くことしかできなかった。




「ん、…」




ゆっくりと唇が重なる。
反射で目をかたく閉じてしまったので、次にロイの顔を見たのはお互いがすっかり離れ切った後だった。




「レン、俺ががっついても嫌がらない?」


『へ…』


「俺、耐えてたんだよ。この半年、ずっと。
キスしなかったのもわざとだから。しちゃったら俺、我慢できる自信なかったから。
でもそのせいで心配させちゃった?」


『…!』




ゆるく腕を引っ張られ、そのまま抱きしめられる。
彼の体温が心地よかった。




「俺、ちゃんとレンのこと好きだから。安心して?」


『…うん』


「なあレン。もう俺、我慢しなくていいってことだよな?」


『…、え』




彼の腕の中で完全に気を緩めていたら、突然視線を合わせるように体を離したロイが目の前でニヤリと笑った。
見たこともないその表情に嫌な予感がしたのは決して気のせいではない。




「遠慮なしで良いんなら、これからはそのつもりでいくから」


『あの…ロイさん、ちょっと顔が怖い……』


「誘ったのレンだからな?」


『っ、んー!』




さっきの優しいキスはどこへやら、噛み付くようなキスをされて息が詰まる。


この人は怒らせたらまずいタイプと似たような人種なのだと、このとき私は初めて知った。






うまくいかない



(あまりに遠慮が無さ過ぎる)
(俺半年頑張ったと思わない?)




END.




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両極端なロイさん。

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