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「忙しいオマエのこと、ピクニック行こうぜ!なんて理由で呼べねえし……。でも親友なのに一緒に居られないのはヤだし、ネモもボタンもレンにべったりだから、オレも負けねえように頑張ってんだ!」




――だからこうやってレンから会いに来てくれるの、すげえ嬉しい。

首元にすり寄られて思わずびくりとする。大きな犬みたいなものだって私が割り切れれば良かったのだけど。
でもそっか、ペパーはネモやボタンの真似をしていたのか。聞かずとも理由が分かってほっとする。嫌なことがあったわけじゃなくて良かった。
ボタンは一緒に授業出たりご飯食べたりするくらいで「べったり」と言うほどではないと思うけど、ネモは結構スキンシップ激しいからな。彼女に負けないようにと思ったらこうなるかもしれない。…ちょっとやりすぎな気もするけど。
ペパー、ヤキモチ焼きなところあるからなあ。


彼のやりたかったことは理解したものの、じゃあこのまま放置しておいていいかと言われると考えるところがあって。幸い外ではここまでのことはしてこないけど、ほっといたらそのうち所構わずになりそうだから。
そしたら今でも割と勘違いされがちな仲なのが間違いなく“確定”になる。私は困らないけど、ペパーにそのつもりがないなら可哀想だ。
この辺りで一言くらい言っておいた方がいいかな、なんて思いながらすぐ横にあった頭を撫でる。どう切り出せば彼を傷付けずに済むだろうか。




「……レンさ、イヤじゃない?」


『え?』


「オレはあいつらと違って男だろ?…あんまベタベタすると、レン嫌がるかなって…思ってたんだけど。
これだけくっついてても、オマエ抵抗ひとつしねえから……」




耳元で聞こえていた声に不意に熱っぽさが混じる。――あれ、もしかして私、ずっと量られてた?
そう理解し始めてからすぐ放たれた彼の次の言葉に、推測が確信に変わった。




「オレ、今のままでも充分なはずなのに……もっと欲張りになっちゃいそうで…。……どうしよう」




ペパーの声が震える。
懇願するようなその声の中に色を感じたのは、きっと気のせいではない。

気が付いたら、腰に回っていた彼の腕に自分の手を重ねていた。




『…なっちゃえば?』


「おまっ……そう簡単に言うなよ!」


『だって、ペパーが喜んでくれるならわたしも嬉しいし。…ペパーには幸せになってほしいしさ』


「…!」




彼が顔を上げて、肩に乗っていた重みがなくなる。
「それ…」と少し暗めに呟いた彼は、何やら考えている様子。




「…同情か?もしかして、オレに会いに来てくれるのも…。……いやゴメン、何でも、」


『同情が全くないって言ったらウソになるかな。
でも幸せになってほしいって思うのはペパーの人柄があってこそだよ。わたしもペパーのこと、大好きだし』


「だ……っ、え!? てか、“も”って、」


『あれ、ペパーってわたしのこと大好きでしょ?…違うの?』


「え…っ、……ち、違わない…」




動揺したのか一瞬腕の力が抜けて、と思ったら恥ずかしくなったのかまたぎゅっと肩に顔を埋められて。表情は見えてないのに背中越しに感情が全部伝わってきて、思わず声に出して笑った。

いろんな心配をしてきたけどどうやらみんな杞憂だったらしい。空いていた手で隣にあった彼の頭を支えて、その頬に唇を押し付ける。




「い、い、いま……っ!!!」


『欲しいならあげるよ。…わたし、ペパーのこと幸せにできるかな?』




耳まで真っ赤になったペパーが片方の頬を手で押さえて飛び退く。…こんなだから、そっち方面だとは思ってなかったんだよなあ。
しかしながら小さな声で「レンがいい」と呟いた彼の目は本気で、じゃあこちらも今後はその気で行かせてもらおうかな、と。


ようやくちゃんと顔を見せてくれたペパーに、「最初は何からしようか?」と少し挑戦的に笑ってみせた。






さあそのどうしてやろうか




(も、もうちょっと心臓が落ち着いてから……!!)
(そっちから仕掛けて来たのにねえ……)





END.