去るものを追う 1

 



ペパーに避けられている。


気のせいではない。間違いなく避けられている。
何故なら、あんなにべたべたとくっついてきていたのがここ一週間はたと止んだからだ。

朝はわざわざ私の教室に来ていの一番に挨拶、同じ授業に出れば必ず隣の席に。
お昼ももちろん一緒に食べ、たとえ違う授業であってもその移動中ギリギリまで私の隣にぴったりとくっついて動いていた彼が。


なんとこの一週間丸々、顔すらまともに合わせていないのである。




『(授業で同じになることもあるけど、なんとなく近寄りがたい雰囲気なんだよね……)』




身支度をし、寮の部屋から教室へと向かう。

病欠でないことは「避けられ」1日目に確認している。隣に彼がいないこと以外はいつも通りだったその日の授業で、普通に彼と出くわしたから。
朝話し掛けてこなかった時点でてっきり具合が悪くて休んでいるものだと思っていた私は、教室の隅っこの席に座っていたペパーの顔を思わず二度見……いや、三度見した。
話し掛けてみても良かったが、彼がわざわざ目立たない席に座っていたこと、いつもだったら誘われるランチにも誘われなかったことから、そっとしておいた方が良いと思いあえて近付かなかった。
たまには機嫌が悪いこともあるだろうと大して深く考えていなかったのだが、それが今もなお続いている状態である。


いくら広い学校とはいえ、お互い移動パターンは決まっているので毎日どこかしらで彼を見掛けていた。が、毎回挨拶をする間もなくそそくさと逃げられる。
酷いときは彼が元来た道を引き返すこともあり、誰がどう見ても偶然ではない。明らかに「避けられ」ている。

問題は、何故避けられているのか理由がさっぱり分からないことだ。




「はよ。…今日もペパーいない感じ?」


『おはよ〜。うん、そんな感じ』


「あ!レンにボタンだ!おはよー!!」


「ネモ…朝から元気過ぎ……」




一人で廊下を歩いていたら声が掛かった。二人はペパーが居ても居なくても声を掛けてくるから、彼が居ないことはそんなに影響がないのだけど。
それでも今の状況を「異常」だとは思っているようで、数日前から「ペパーどうしたの?」と何度も聞かれていた。




「喧嘩はしてないんよね?」


『うん。わたしはそのつもりだけど…』


「一回声掛けてみたら?あんな引くほど引っ付いてたのが急になくなるって、絶対何かあったと思うし……」


「うんうん、そうしなよ!まあ〜私はペパーがつきっきりじゃない方が、レンにバトル申し込みやすいんだけど!」


「……ネモ…」


「うそうそ、冗談だよ〜!!レン、行ってきなって!」




「実はレンに構ってほしいのかもよ!」とネモに背中を叩かれる。二人らしいどこかトゲのある物言いにはちょっと苦笑いしたけど、ちゃんと心配はしてくれてるんだなって。
このままほっといても変わらなさそうだし、私から聞きに行くしかないか。そうと決まれば今日中にケリをつけてやろう。

こそこそ逃げたところで逃げられる範囲も決まっているし、寮のある学校だから最終手段で「部屋に押し掛ける」という手も使える。追い詰めるのはだいぶ簡単な方だ。
さくっと終わる話じゃないかもしれないし、行くならやっぱり放課後か。待ってろペパー、震えて眠れ。




『よーし、チャンピオン様が直々にお迎えに行ってあげようっと!』


「お、お手柔らかに……」




張り切って右手で握り拳を作る。

別にべたべたくっついてろと言いたいわけじゃないけど、あれだけ人懐っこく寄ってきていたのが急になくなると調子が狂うし気にもなる。どうでもいい他人ならほっとくけど、仲良しだと自負があった人だ。
親友なのに理由も言わず離れたこと、後悔させてやるんだから。

隣では別の意味でボタンが心配そうな顔をしてたけど、特に気に留めずに頭の中でこの後の作戦を立て始めた。






るものを 1




END.