1
『…というわけで、大人しく捕まれ!ペパー!!』
「どわー!?」
放課後。
運悪く本日最後の授業がペパーと被らなかった私は、授業終わりの生徒がぞろぞろ出てきている教室を片っ端から回っていた。
やがて廊下に一人で歩いているターゲットを発見し、人混みに逃げられたら面倒だからと最初から臨戦態勢で挑む。
「おま、オマエ!! ポケモン使うのは卑怯…!!」
『だって走ったら勝てないもん。逃げたいならバトルだよ』
「オレがオマエに勝てるわけねえだろ!! わ、分かったから離せって…!!」
「こんな道のど真ん中で捕まえんな」と私のハバタクカミに捕まったペパーが向こうの方で何やら抗議をしていた。
ゴーストタイプではない私は人の合間を縫いながら徐々に近付いて、「逃げない?」と彼に確認を取る。
頷いた彼を解放する頃にはどやどやと周りに野次馬が湧いていた。まあ、大したことじゃないのが分かってすぐに散ったけども。
「話をしたいから移動しよう」とペパーを寮の方へ誘うと、彼はぶすっとした顔のまま大人しく隣を歩く。
「オマエ、時々びっくりするくらい強引だよな……」
『そう?』
「…そう。そういうとこが……、何でもない」
ついこの前まで所構わず腕取ったり肩組んだりしてきてたのに、今日は少し距離を取られていて。何でなのか理由は分からないけど、まだ「避けられ」は続いてるんだなと感じる。
これはネモの言ってた“構ってほしい”の線はなさそうだな。
自分の部屋に近付くにつれてほとんど人通りもなくなって、この辺でいいかと壁際に寄ってから足を止めた。
「!」
『本題なんだけど。…わたし最近、ペパーに何かしちゃった?』
「……、え?」
『なーんで急に避けられるようになったのかな〜って考えたんだけど、分からなくてさ。
もう本人捕まえて聞くしかないと思って、こうやって連れてきたわけなんだけど……ごめん、やっぱり嫌だった?』
「…!あ……いや、その…っ!」
一週間ぶりにペパーと向き合う。彼と出会ってしばらく、そんなに意識したことはなかったけれど。
元気で感情表現の豊かな彼だからか、隣にいないだけで思いのほか静かなんだなと。そう思わされた一週間だった。
「久しぶり」と言うには短すぎるけど、この距離感、なんだか久しぶりだなって。
目の前にいるペパーに一人で勝手にしみじみとしていたら、ふと視界が暗い影に覆われる。
『…、ん?……ん?』
一瞬理解が追い付かなかったけど、体が締め付けられる感覚で状況を把握した。…なんか今、ペパーにめっちゃ抱き締められてる。
あれ、ついさっきまで「避けられ」てたと思うんだけどな。意味がよく分からず首を傾げていると、すぐ横から申し訳なさそうな声が聞こえた。
「ご、ごめんレン!でもオレ、そろそろ限界で……!!」
『…と、いうと?』
「レンと離れてるの、やっぱ無理だ……!!」
『……、はい?』
私の間の抜けた声にペパーが「ごめんな」ともう一度言って、抱き締める力を強めた。