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それは、人生で初めての出来事だった。




「私と付き合ってください!」


「……はあ?」




思わず出てしまった間の抜けた声に、失礼だったかもしれないと考えるも時既に遅く。一度発してしまった言葉は訂正できるものでもなく、「あー…」とばつの悪い思いをしながら頭を掻く。

ただ数秒後にはやっぱり自分は悪くないのではと、今度こそ声には出さなかったが内心そう考えてしまった。




「えーっと…。オマエ、確か同じクラス…だよな?」


「はい!」


「さっきのって、言う相手はオレで合ってんのか?」


「は、はい!! もちろん!!」


「あ、そう……なのか」




どうしたもんかな、と腕を組む。


これって、いわゆる“告白”ってヤツ?
今まで友達すらいなかったオレが恋愛に縁があるはずもなく、当然告白もされたことがなかった。他人とまともに喋ったことがないのだから当たり前だ。
最近になってようやくオレにも友達ができて、徐々に人間関係も増えてきたけど。こっち方面で近付いてくる奴が出てくるのは想定外だった。

そもそもオレ、この人と喋ったことあったっけ。あったかもしれないけど覚えていない。名前もうろ覚えだ。
その程度の関係で告白なんかされても、というのが正直な感想。最初の「はあ?」は、マジで素の反応だった。

ていうか、それ以前に。




「なんつーか……オレがレンのこと好きなの、知ってるか?」


「それは知ってるけど、レンちゃんとペパーくんはお友達だよね?」


「親友だと何か変わるのか?」


「いくら仲良しでも、恋人とは違うでしょ?」


「うーん……?」




瀕死だったマフィティフをレンが助けてくれたから。親が死んだと聞かされて辛かったとき、レンが傍に居てくれたから。
オレはレンのことが大好きで、外でも学校でも彼女を追い掛け回して、暇があれば一緒に居ようとした。隠す気もなかったから、周りの奴らはオレがどれだけレンを好きか知っているはず。
ましてやオレを好きだと言うならそれこそよく知っているはずで、だったらなんで告白なんかしてくるんだろうと。勝ち目がないことくらい見てれば分かると思うんだが。

やんわり断りも兼ねて聞いてみたつもりがそれでも諦めてもらえなかったみたいで、何でだろうと首を傾げつつもはっきりお断りの返事をした。




「よく分からねえけど、オレが一番仲良くて一番好きなのはレンだからゴメンな。
レン以外とは恋人になれねえから、他当たってくれ」




それじゃ、と言って教室を出ていく。告白の正しい断り方なんて知らないけど、ひとまず意思は伝えたから良いだろう。

さてと、レンの教室に向かうか。そろそろ授業が終わる頃だし。