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「よし、やりますか!」


「「おー!!」」




日が沈み、夕焼けが夜空に変わった頃。
エプロンの紐をぎゅっと結んで準備バッチリになった私と友人二名は、掛け声とともに早速作業に取り掛かった。


明日は女子にとって年に一度の特大イベント、バレンタインデー。しかも私の場合は彼氏ができて初めて迎えるバレンタインだ。
恋人のペパーに手作りのお菓子を贈ろうと思ったものの、何せ彼は料理がとても上手く。下手なものは渡したくないし、あげるならできるだけ美味しいものを作りたい。

あれこれ悩んだ結果、ペパーには内緒でこっそりネモとボタンに試食やアドバイスを頼むことにしたのだが、流れで「練習がてら一緒に作ろう」ということになり今に至る。




「これが“大さじ”!」


「え、初めて使ったん?……ちょ、そんな山盛りにしたら“大さじ1”じゃないから!!」




各自作りたいものを決めて材料と道具を持ち寄り、私の部屋でいざ、調理開始――したのだが。
ボタンは「食べる専門」、ネモは「大さじって人によって感覚違わない?」と言っていたことからどうやら料理の腕は人並み以下らしく、開始直後からてんやわんや。
卵を割ったら殻が粉々になったり、分量を間違えたり、クッキーを真っ黒に焦がしたり。私もケーキの膨らみ方が微妙で作り直したりして、思いのほか苦戦する。

それでも助け合いながらどうにか完成させて、数時間後にはテーブルに三人分の努力の結晶が並んでいた。




『カップケーキと、クッキーと、チョコのパウンドケーキ……なかなかの出来栄えじゃない?あー、疲れた……』


「は、初めてまともなのが出来たかも…。レンの誘いに便乗しといて良かった……」


「うんうん、わたしもこんなに上手に出来たの初めて!味はどうかな?」




ぐったりしつつも、自分たちの作ったお菓子にそれぞれ手を伸ばす。多少焦げたり形が崩れたりしてて完璧ではないけれど、見た目はみんなそれなりものに見える。

大さじの概念を知らなかったネモのパウンドケーキはちょっと味が心配だったけど、本人の反応を見る限りどうやら大丈夫そうで。他の二人のお菓子と自分のを交換して、お互いに試食し合った。




「レンのカップケーキ、すっごく美味しい!! ペパーも喜ぶと思う!」


『そうかな?良かった…』


「てかペパーなら何でも喜びそうじゃん?レンの作ったものだったら、丸焦げでも喜んで食べそう」


『そんな気はしないでもないけど、あんまり下手くそだと恥ずかしいじゃん……彼女として……』


「そう?むしろ喜んでいろいろ作ってくれそうじゃない?世話焼くの好きそうな感じだし!
…あれ、そういえば今日はペパー来る予定ないの?」


『さすがに毎日会ってるし、来るとしてもたまーにだよ。ペパーも今頃チョコ作ってるんじゃない?』


「確かに。明日学校にめっちゃ豪華なの持ってきたりして……」




――ピンポーン。

突然会話を遮るようにインターホンが鳴り、食べる手を止めて三人で顔を見合わせる。

…もしかしてこれは、もしかしなくとも。
嫌な予感がしたのは私だけではなかったようだ。