――
「な、なんかちょっと罪悪感あるな……」
『ペパーが言い出したのに』
25日当日、クリスマスパーティー終了後。
お風呂や後片付け、明日の支度や寝る時間を考えて解散は21時を少し過ぎた頃になった。ネモやボタンと同じように何食わぬ顔をして私の部屋を出たペパーが、10分ほど後になって再びこの部屋を訪れる。
さっきまで持っていた大きなプレゼントボックスは自室に置いてきたようで、代わりに手には小さな紙袋を携えていた。
「こっちがクッキーで、こっちがオマエへのプレゼントな!」
『え、プレゼントならさっき貰ったのに……ていうかクッキーまで焼いてたの?』
「プレゼントはいくつあってもいいだろ!ケーキじゃ被ると思って、クッキーにしたんだ」
まだ後片付けが終わり切っていないテーブルで、クリスマスパーティーの延長戦が始まる。雪だるまやツリーの形をした可愛らしいアイシングクッキーは四人のパーティーでは見掛けなかったものだ。
既にたらふく食べた後だったけど、元々甘いものに目がないこともあり追加でクッキーを食べるくらい訳ない。
見た目が可愛かったので記念に写真を撮り、ちゃんと撮れてるのを確認してから早速いただく。と、ペパーがこちらをじっと眺めていることに気付いた。
『…ペパーは食べないの?』
「ん、オレは味見してるから。レンが食べて、余ったら食うよ」
『ほっとくと余らないよ〜』
「ははっ、いいぜ!全部食えよ!」
嬉しそうにけらけらとペパーが笑う。出会った当時と比べたら随分よく笑うようになったが、今日のパーティーではより一層楽しそうだった。
完全に思いつきだったし突発的で大したこともしてないけど、企画した甲斐はあったかな。ぶっちゃけ仕事量で言うと料理を用意してくれたペパーが一番多くて一番頑張ってくれてたんだけど、本人がこれだけ楽しそうだからまあいいか、なんて。
本当は言い出しっぺの私が一番働くべきだと思うけど、ペパーの料理にはとてもじゃないけど敵わないし。買い出しやプレゼント選びは率先して動いたつもりだし。適材適所ってやつ。
「……なんか、幸せすぎて怖いくらいだな…」
『怖い?』
「友達とクリスマスにパーティーして、オレの料理をみんなが美味いって食べてくれて、プレゼントにエプロンまで貰ってさ……。ちょっと前までのオレからしたら、嘘みたいだ」
『わたしからすれば、ペパーに友達が居ない方がびっくりだったけどなあ』
「はは、サンキュな。…全部、レンのおかげだよ」
「ちゃんとお礼言っておきたかったんだ」。向かい合わせで座った彼が私の手を取って握る。
優しく細められた目からは痛いほど「好き」という気持ちが伝わってきて、素直で分かりやすいのが彼の良いところだと思ってるけど、そのまっすぐさには時々圧倒されてしまう。
「あのとき、オマエに声掛けて良かった。オマエに会いに学校行って良かった。
レン、来年も再来年も……もっとずっと先まで…またこうやって、オレと一緒に過ごしてくれるか?」
それはまるで、懇願のような。泣きそうな顔をしてこちらを見る彼を、しばらく静かに見つめ返す。
一応質問の形をしているが答えは一種類しか許していないし想定もしていないだろう。まあ、こちらも本心でその答えを返すのだから別に構わないが。
『うん。また来年も、卒業しても、今日みたいに一緒に過ごそうね』
「……っ、おう!! 約束だからな!!」
『うわっ』
ペパーがテーブルから身を乗り出して抱き着いてきたせいで、クッキーを載せていた皿がガシャンと音を立てた。「あ、悪い」と言いながらも彼は離れる素振りを見せないどころか力を強めてきて、こちらの身動きが取れなくなる。
大好きだという気持ちは言葉でも態度でもバシバシ伝わってくる。…幸せにしてあげたいよなあ、この人のこと。
パーティーの延長戦はペパーが部屋に居座ったせいで結局2時間以上も続いて、二人して次の日の授業が眠かったせいでネモとボタンに全部バレたのは、また別の話。
パーティーの、その後
END.