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「…あれ、もうこんな時間。そろそろ花火が上がるから移動しようか。トウヤから見やすい場所を教わったんだ」


『そうなの?わたし、ここのお祭りは初めてだからそういうの全然知らないや…』


「こっちだよ。行こう」




お面を着けるために一度離した手を再び握られ、場所を移動する。Nに他意はないんだと言い聞かせても、どうしても触れられるたびにドキッとした。こればかりは致し方ない。


彼に連れられた場所は賑やかなお祭りの会場からは離れたところで、二人きりというわけではないけれど、周りの人とは話し声が聞こえないくらいの距離が空いていた。




「一番よく見えるのは、みんなが向かっていたあっち側。こっちは少し見づらい代わりにそれほど混んでない…ってトウヤが言っていたけど、本当だね。
 にぎやかなのは楽しいけど、夜にあがる花火は静かな場所でみていたいな……」




「特に、キミとみるなら」。

Nがこちらを向いてにこりと微笑む。その言葉にも綺麗すぎる笑顔にも、全くもって他意がないのだから恐ろしい。相手が私でなければまず間違いなく勘違いを引き起こすだろう。


なるべく平静を装いながら、「花火楽しみだね」と当たり障りのない返事をする。声や表情は変ではなかっただろうか。心臓の音は聞こえていないだろうか。
ドキドキする気持ちをどうにか抑え込もうとして片手を胸に添える。そうこうしているうちに、頭上で花火が上がり始めた。




「わあ……!」




感嘆の声を漏らした彼に一度目をやってから、自分も夜空に打ち上がる花火を見上げる。
この音があればドキドキを隠す必要はない。安堵してゆっくり息を吐いた。

次々に打ち上がる花火が夜空を彩る。確かに気持ち遠い気がするけど、それでも十分な見ごたえだ。
私としてはとにかくNに楽しんでもらえれば良くて、それを思うと「静かに見たい」と言っていた彼にこの場所は最適な気がする。
後でトウヤくんにお礼言わなきゃと考えつつふとNを見上げたら、なぜかバチリと目が合った。




「…ねえ、レン」


『なに?』


「ボク、キミのことがスキだよ」


『え?…あ、うん?』


「……キミ、ボクが何を考えているのかよく分かっていないだろう?
 今日だってそうだ。今までもそうだった」


『えっ…と、どういうこと?』




Nの声と花火の音が混じる。言葉の意味がよく分からず、思わず聞き返してしまった。
なんだか普通なら勘違いどころでは済まないことを言われたような気がしたけど、相手はNだから。いつものように言い聞かせながら見上げた視線の先にいた彼は、いつになく真剣な顔をしていた。




「外の世界を知らなかったボクに、一生懸命いろんなことを教えてくれるレンが、ボクはダイスキだよ」


『あ……うん。ありがとう…』


「…ほら、分かってない。
 お祭りに誘っても、手を繋いでみても、…スキだって言っても。キミは全部受け流す。それはボクだからか?」


『え、えーっと…?』


「ここまで言っても分からないなら……トウコが言ってた通り、最終手段に頼るしかなさそうだ」




理解が追いつく前に彼が屈み、私の肩に手を乗せる。
続けてもう片方の手を頬に添えると、ほんの一瞬、触れる程度に唇を寄せた。




『え!? …え!?』


「……なるほど、…確かにちょっと、恥ずかしいかも。
 これでも伝わらないならボクにはお手上げかな。またトウコに相談しないと…」


『あ、えっ、と?その……』


「ボクはキミが思うほど、キレイな人間じゃないってことだよ」




花火に照らされたNは苦笑いのような表情を浮かべていた。頭が全く追いつかないけど、頬にキスをされたということだけは理解した。
…え、なんで?どうして?ぐるぐると疑問符が脳内に飛び交う。もはや花火どころではなかった。




「いつか、キミの答えが聞けたら嬉しいな」




「それまで待っているね」。


穏やかに笑うNの後ろで、大きな花火が何度も夜空に打ち上がっているのに、
私の目は、一向に彼から逸らすことができなかった。











END.



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ポケマスネタです