線香花火と下心

 




『どっちが長く続くか勝負ね!』




昔からよくやっていて、今でもなお続いている遊び。

“線香花火を長持ちさせた方が勝ち”という簡潔なルールのそれは毎年夏に決まって開催される。
勝ったとしても特にこれと言って良いことはないが、ついつい争ってしまうのが人間というもので。

今年も例外なく挑まれた勝負に、やってやると腕まくりをした。




『そうこなくっちゃ!』




祭りがあったから友達と一緒に行ってきた、その帰りに立ち寄った近所の公園。
準備に取り掛かるレンは俺が密かに想いを寄せている相手でもある。


“男女二人きり”という状況に向こうは特に何も思ってないようで。
幼いころから続いてきた変わらない関係の延長だと、そう割り切られていることに残念がっているのは自分だけ。

さっき屋台のおじさんに「彼女かい」と聞かれたときも、焦ったのは俺だけだった。




「(……違いますよ、か)」




きっぱりすっぱり、一言で言い切られた。
彼女にとって俺というのはその程度なのだろう。

ぼうっとしていれば名前を呼ばれて、慌てて振り返ればぼんやりした灯りで照らされる彼女の笑顔が目に入った。




『はい、リンクの分』


「5本か…なら5回戦な」


『うん、ほら持って!』




――せーの。

用意した一本に同時に点火して、数秒もすれば線香花火独特の丸い火の玉が出来上がる。
少し動かしたらすぐ落ちるそれは、きっと儚いものの例えに丁度いい。




「……」




集中しているのかレンは何も話さず、かと言って俺も特に言うことがなく。
静寂の中ぱちぱちと火花を散らし始めた火の玉を目の前のレンはじっと見つめて、そんな彼女を俺は時々盗み見た。




「(“女性は浴衣を着ると綺麗に見える”…)」




ふと昔誰かが言っていたことを彼女を見て思い出した。
あれは本当なのかもしれないと、花柄の浴衣が映えるレンを眺めながら思う。
普段とは違う大人びた彼女にどきりとさせられたのはきっと去年も一昨年も同じで。


線香花火の周りを手で囲い風避けをしながらも、目線はちらちらと彼女。
たかだか線香花火に真剣になるレンが服装に似合わず可愛くて。

来年もまた同じ姿が見られるかな、なんて。




『…あ!落ちちゃった……!』


「はは、1回戦は俺の勝ち」




こんな下心気付かれないようにしないといけないと、彼女には杞憂であろう心配を一人し始めた。








(よし、じゃあ2回戦目な)
(次は負けない!)






お題:Aコース








END.



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浴衣を着ると綺麗に〜は母校の理科の先生が言ってた。

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