記念日

 



「「メリークリスマス!」」




パンパンとクラッカーの音が響いた。

今日はファイターとマスター達みんなで毎年恒例のクリスマスパーティ。
マスターがご馳走を用意してくれて、それを囲みながら騒いで。プレゼント交換をして、また騒いで。それはもう、楽しかった。




「あーあ…。なーんでオレの所にレンのプレゼントが来ないかなあ…。」


『仕方ないよ。人数多いし』


「なんでそこでマスターなんだ…。今度殴ってやる…。」


『やめてリンク』




全員参加のプレゼント交換のために私が選んだのは赤いマフラー。
散々悩んだ結果の割にありきたり過ぎかな、なんて思ってたけど当たったマスターは喜んでくれた。
それを見て私も嬉しくなった一方、リンクは一人むっとしていて。そもそもプレゼント交換でピンポイントで欲しいものを当てるなんてかなり至難の業なのに、それを知った上で彼は不機嫌で。
よしよしと宥めてもリンクは頬を膨らませて腑に落ちなさそうな顔。でもそれがちょっと可愛くて笑ってしまう。




『まぁいいじゃない、今は静かだし、誰もいないし』


「…誘ってる?」


『馬鹿ね』




静かな空間にリンクと二人きり。

疲れて寝た子供達と、それに巻き込まれて疲れた雇われ遊撃手達。
酒の飲み過ぎでダウンした大人達、慣れない酒にダウンした剣士組。
いつも煩いぐらいのスマブラ寮は、驚くぐらいに静かで。

今起きているのは私達二人とマスター、クレイジーの管理人コンビくらいだろう。彼らは片付けをしているから、ここにいるのは私達だけ。二人してお酒を控えたのも、騒ぎすぎずにいたのも計算の内。


毎年恒例、パーティ後の二人の時間。




『ね、早速プレゼント交換しよ?』


「……えっと…レンから、見せて」


『? …いいけど』




みんなとのプレゼント交換用とは別に用意したプレゼント。
それは紛れもなく、この人のことだけを考えて用意したもので。いわゆるトクベツ、ってやつ。




『……、結局マフラーなんだけど…ね。こっちは手編みなの』


「手編み!?レンの!?」


『言っとくけど、マスターのより数倍作りが下手だから』


「そんなことない!」




おずおずと袋から取り出したマフラーを奪うように持ち去って自分の首に巻いてはしゃぐそれはまるで子供。
かと思えば「あったかい」なんてあまりにも綺麗に笑うものだから、思わず反射で顔が熱くなる。




『そ、それで、リンクのは?』


「えっ…!えっと……
…ちょ、ちょっと待って。心の準備するから」


『あはは、なにそれ』




そう言うとリンクは深呼吸をし出した。心の準備だなんて、プレゼントを渡すのにそんなものが必要なのだろうか。
それでも彼が真面目に息を大きく吸って吐いてを繰り返すから、私は黙って見守っているしかない。

数秒後、こちらを向いたその青い瞳が少しだけ揺れた気がした。




「レンは、オレのこと……好き、だよ…ね?」




それは唐突に。前触れもなく紡がれる。

想定外の質問に少し驚いたものの、口からは「当たり前でしょ」なんて可愛くない返事が漏れる。




『好きでもない人にマフラーなんか編みませんー』


「あはは…そうだよな。ごめん、確かめたかった……っていうか、独りよがりじゃないって、確かめたかった」




それだけ言って、リンクはちょっと頬を染めて笑う。
その笑顔がたまらなく愛しい。




「これからもオレを好きでいてくれる?」


『もちろんよ。愛してる』


「…良かった。ねえ、レン」


『なあに?』


「これ、……受け取ってくれる?」




ようやく取り出したのは彼が用意したらしい“プレゼント”。


小さな箱。一本だけ巻かれた細い赤のリボン。
手のひらに簡単に収まるサイズのそれと、そわそわしていたリンクの態度。今ならその意味が、わかる。




「少し前から……今日にしようって、決めてた」




乗せられた僅かな重み。固まって動けない私の両手のひらをふわりと、小箱ごとリンクの手が包む。
流れた涙は無意識だった。




「オレと…結婚、してください」









(よろ、しく、お願い…しま、す)
(…なんかオレも泣きそうだ、レン)






END.



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2009/12/25

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