ヘルプミー! 1
あいつと喧嘩した。
どっちが悪いかと聞かれれば、多分自分が悪い。彼女とは何も関係のないところで生じたイライラを、偶然話しかけてきただけのそいつにぶつけてしまった。
以来、なんとなく気まずいまま今日で三日が経過。
「………」
今までこんなことがあっただろうか、と。
悪いとは思っているものの、素直に謝れる性格でもなければ素直に聞いてくれるやつでもない。
やけに違和感を覚える右隣の原因があいつがいないからなんて、そんなのは冷静を取り戻したその日から知っていた。
「…!」
ふ、と。違和感と共に歩いていて目に入った、それ。
ガラス板で囲まれた狭い空間に、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている中のひとつ。赤いリボンが付いた白くてふわふわのそれは、本物のそれとは似ても似つかないけれど。
“ねえロー、あのくまさん可愛い!”
“…あ?………”
いつかした会話が脳裏で自動再生される。
三日間見ていないあいつの、楽しそうな顔と声。
「………、ハァ」
溜息を吐いたくせに、ぐるりと方向転換して自然と元来た道を引き返す自分の両足。
他人のためにこんなことまでする自分を、一体誰が想像出来ただろうか。
ヘルプミー! 1
(こんなのに頼る日が来るとは)
END.