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「「帰る方法がわかった!!?」」


『あー…いや、正確にはわかった訳じゃなくて……』




時計の針はもう21時を回った。


ローさんが声をかけてくれたおかげで、船番をしている船員さん以外の全員が集まってくれた。
隣にはエースさん、目の前の席にはローさん。
今日あった出来事を一通り話した。

偶然、この街でドフラミンゴさんに会ったこと。
彼は私のいた国のことを知っていたこと、さらに帰り方も知っていると言っていたこと。
私みたいな人間の存在を知っている人が、実際にこの世界にいたこと。
そして何故か、身元がバレると命に関わるらしいこと。




「……。ドフラミンゴ…」


『あ…ローさんと一緒にいるとは言ってないよ、もちろん。エースさんはその場にいたからあれだけど…』




ローさんと彼の間に因縁があることは知ってたし、出会ったら大変なことになりそうなのでもちろん言わなかった。
というのも、ドフラミンゴさんは私とエースさんが一緒にいるのを目にしたからかその件に関しては聞いて来なかった。




「まとめると…ドフラミンゴから詳しく話を聞き出せれば、咲来ちゃんは帰れるかもしれないってことか」


「聞いている限り、どうやらこんなことになってるのは咲来だけじゃないようだな」


『そこ引っかかるよね……』




――噂では聞いてたが、まさか会えるとは

あの言葉がそのままの意味なら、日本からここへ迷い込んだ人間は私だけじゃない。
存在は珍しいけど、ゼロではないということか。




「命が危ないって件は?」


『よくわかんないけど、わたしみたいな人のことを知ってる人からは狙われるんだって。主に海軍のお偉いさんって言ってた。あの人は七武海だったから知ってたみたい。
だから他人には言うなって……さすがにみんなには隠す気になれなかったけど』


「狙われるってことは何かあるんだろう。大方、未来予知か何かか」


『別に予知じゃない……』


「お前からしたら“本で読んだ”程度かもしれないが、こちらからすれば未来予知みたいなものだ。
能力者からすりゃ戦ってもないのに戦法がバレてるんじゃ話も違ってくる……これでお前は貴重な人材で確定になった訳だが」




――お前はどうしたい?

目の前のローさんに問われた。




「帰りたいか?…おれは引き止めるつもりはねェ」


「えっ!?なんで止めないんですか船長!?」


「なんでってそりゃァ……おれが引き止めたところで何か変わるのか?
何するんだか知らねェが、“帰り方”とやらを教わって咲来に実行されりゃそこまでだ」


『………』


「咲来の問題だ…もともとおれには関係ねェよ」




周りの船員さんがざわめく中、割とあっさりとした返答をしてきたこの船の船長。
別に冷たいわけじゃない。わかっている。この人は私の意見を尊重してくれているんだ。




『――、正直な話ね…』




船員さん一人ひとりが、こっちを見てくれてるのがわかる。
たった十日――たった十日の付き合いだけど、この人たちは私のことをとても大事にしてくれた。




『帰らなきゃって思ってるのに、やっぱり心のどこかで…帰りたくないって思ってる。
思ってるけど、帰れるならすぐにでも帰らないとダメだって、ちゃんと分かってるよ。

今は帰り方があるかもってわかったからちょっと安心してて、それに甘えてる――本当かどうかもわからないのに。
ドフラミンゴさんの話が本当だって前提で話を進めるなら、わたしは帰りたいと思ってる』


「………」


『まだここにいたいけど、やっぱりわたしには向こうの生活があるから…夏休みも一ヶ月で終わりだし。
だからあと…そうだな、順調に行けば一週間とか……長くて二十日くらいかな。みんなと一緒に過ごせたら、嬉しい』




さっきまでざわめいていた食堂が一気に静かになる。
部外者が消えればみんなは元の生活に戻るだろう。そしてまた、物語は進んでいく。それでいい。それが正しい。




「火拳屋抜きで、何か反対意見のある奴は?」




――シン。

夜だからか、その静けさがやけに身に染みる。




「………決まりだな」




誰も何も発することはなかった。






帰り道

(どうしてだろう)
(この場にいる全員が、それを望んでいないように見えた)




END.









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