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『それで、リリちゃんと何話してたの?』


「…気になるか?」


『ええ。わたしには言えないことかしら?』




沙月のその言葉に嫉妬が混ざっているのを感じて、また胸の奥が音を立てる。
見た目はいつも見てきた沙月だけど、好きだと伝えただけでこんなにも違うものかと。




「あの子、お前のこと好きなんだってさ」


『…そう。それなら良かった』


「結構本気みたいだったぞ?」


『そうね。前に恋人いないか聞いてきたから』




口止めされていたのは沙月に深い理由もなく会いに来たことだったから、こっちは良いかなって。
間違いなくそっちの方がだめだと分かっているのに言ってしまうあたり僕も質が悪い。

リリちゃんから真面目に好かれていることを沙月は自覚しているようだった。
応える気がないのを隠していないとはいえ多少の罪悪感はあるようで、少し申し訳なさそうな顔をする。
それでもこいつは優しくしてしまうのだろう。そういう奴だもんな、お前。




『そろそろ戻るわ。
貴方には休んでて欲しいけど…まだここにいるか、客室でお茶でも飲んでるか、わたしと無賃労働するか、家に帰るか……どれがいい?』


「それはもちろん、お前の手伝いをして帰りにメシ一択だろ」




日が傾いてきて、辺りを赤く照らす。
沙月が僕の腕を名残惜しそうに解いたように見えたのは気のせいではないと信じたい。


久しぶりのオフは、久しぶりの恋を思い出した日になった。






甘い恋なんて


(もう二度としないと思っていた)




END.







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