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『お電話代わりました。階川です』


《もしもし、沙月?今飲んでるんだって?》




降谷さんの仕事の状況を知らないし、今日飲みに来ていることは言っていない。さっき風見さんから聞いたのだろう。
来てますけど、と“降谷さん”相手に敬語で返す。さすがに関係者と一緒にいるときに砕けた口調では話せない。

まさか風見と二人じゃないだろうな、と降谷さんが零したので「違いますよ」と笑っておいた。




《お前、僕の知らない間に風見と飲みに行ってたらしいからな…》


『ああ…何年前の話ですか?本人に許可は取りましたよ』


《僕の許可を取ってない。次からはちゃんと言うこと。…あ、でも次はない》


『めちゃくちゃですね…』




まあいつも通りですけど。
笑いながら言ったら、向こうも電話の向こうで笑っているようだった。

ところでこれ借りものなので本題は何ですかね、とわざわざ電話を寄越した理由を聞くと、「ええと」と降谷さんが珍しく言葉を詰まらせた。




《その、この前言ってた買い物なんだけど…。今週日曜、どうだ?》


『…その話、今する必要あります?』


《別にいいだろ。仕事中じゃないんだから》


『降谷さんは仕事中なんじゃ?』


《いいんだよ、大事な話なんだから…》




仕事中であることは否定されなかった。また徹夜みたいな仕事に首突っ込んでるな、この人。
買い物というのはこの前お願いした服とダミー用のペアリングを選んで欲しい件だろう。二人で出掛けることくらいいくらでもあるし、今更そんなに照れるようなものでもない気がするけど。

詳細はまた後でメールするから、と通話を終わらせる。切り際に「男に言い寄られるなよ」と言われた。
この格好、あの仕事の後で言い寄ってくるような男がいるなら逆に見てみたい。




『風見さんすみません、長くなってしまって』


「大丈夫です」


「階川さん、降谷さんと仲が良いんですね…」


『え?ああ…どうでしょう…』


「俺は恐ろしすぎて話し掛けるのも緊張するよ…」


『部外者じゃなければわたしも同じように思いますよ…』




あの人の役職は知っている。それが警察という組織の中でいかに高い地位であるかも。同じ職に就いていたら、間違いなく名前だけで謙遜する。
私が今の立場で、降谷零という男に出会えたことは幸運だった。




『(えーっと、今度の日曜日…)』




予定を空けておかないと。ケータイのスケジュールに「ゼロと外出」とメモを残す。

仕事抜きで彼と出かける予定を書き込んだのはこれが初めてだと、そう気付いたのは帰路についてしばらくしてからのことだった。






その意味を理解する


(…ああ、だから照れてたのか)




END.









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