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「珍しいですね、お二人が揃うなんて」
隣に上司、後ろに客人を乗せて現場へ車を走らせる。
時刻は深夜。歩く人がいないどころか、もうろくに道路の信号も動いていない。
この職業ではちょくちょくある夜中の仕事だ。自分や隣の人は慣れていることだが、後ろの人はただ巻き込まれただけなのでちょっと可哀想だなと思う。
自分の言葉に助手席の上司は「そうだな」と呟いて、何かを考える素振りを見せた。
「確かに最近あんまりなかったかもな。最後はいつだっけ…」
『東京で誘拐犯の張り込みしたときじゃないですか?』
「ああ、あの時以来か。となると数ヶ月前か…」
ここのところはポアロの方がよく会うな、と降谷さんは言った。
部下からの報告で前から目を付けていた犯罪者グループの居場所が割れたと聞き、夜ではあったが急いで降谷さんに一報を上げた。
その結果彼も現場に同行するとのことで、途中の道で合流したところ隣には協力者である階川さんの姿が。
話を聞くと、今回の仕事には彼女を連れて行くようで。「たまにはこいつの活躍を生で見ようかと思って」と降谷さんは笑っていたが、なにもこんな夜中の仕事に呼び出す必要はないと思う。もっと別の仕事はなかったのだろうか。
少し前に美人だからどうのこうのと言っていたが、あんまり待遇が変わっている気がしない。これでこそ降谷さんだとは思うものの。
「お互い苦労しますね」という気持ちをちらりと視線で投げかけたら、クールな佇まいの階川さんが少しだけ口角を上げてこちらに微笑んでくれた。
「風見、そっちの指揮は頼んだぞ。それじゃあ、配置図の通りに」
「「はい!!」」
現場に着き、わずかな明かりしかない中で作戦を確認してからそれぞれの持ち場に向かって散らばる。
随分前に使われなくなった廃屋が今日の仕事場。誰もいないはずのその建物に、最近になって怪しい人間が出入りするようになったと部下の張り込みで分かった。
そのことを奴らに悟られる前にここで叩いておく。今日の仕事はそういう内容だった。
「(階川さんは相変わらず単独か……凄いな)」
直接乗り込むのは自分を含めて五人。指名したのは降谷さんだ。
その中で警察官でもないのに単独行動をしている階川さんはいつもながら異質な存在。相手は武器を持っていてもおかしくないような連中だが、降谷さんは平気で階川さんのことを指名する。
よほど信頼されているのだろう。羨ましい……などと、今は言っている場合ではなかった。
「いました!二人!」
《こちらもだ!…四人!階川、こっちに来い!!》
《はい!》
暗がりに現れた人影がこちらへ向かって走ってくる。
降谷さんと同じように無線で部下に呼び掛けた後、応戦するため両手の拳を身体の前で握りしめた。
――
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