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『姫、何かご希望は?』


「うーん……どうしようかな。他の子にはどんなことをしてたんだ?」


『そうね…。花婿役だから、肩を抱いたり手を繋いだり、手を取って口付けるフリ…とか』


「どれもやったらスキャンダルだな……」


『…ほんとに、なんで来たんだか』




撮影会って書いてあったのに、と沙月が溜息を吐く。困らせることは分かってたけど、足が勝手に動いてたから。
悩むにしてもあんまり次の人を待たせるわけにはいかない。何かを思いついたらしい沙月が、「じゃあこうしましょう」とポケットからスマホを取り出した。




『わたしのスマホで1枚だけ撮るから、終わったらすぐにこの場で消す。どう?』


「…うん、それならいい」


『決まりね』




僕にしか聞こえないよう、小声で彼女が耳打ちしてくる。


沙月がスマホを操作して一時的にオフラインにした。万が一にでも撮った写真が電波に乗らないようにするためだ。
そしてカメラを起動してスタッフに手渡し、撮影のために位置に着く。僕はどうすればいいだろうかと指示を待っていたら、不意に沙月が片膝をついて僕の手を取った。




『姫。本日はご多忙の中、ありがとうございます』


「…!」


『それでは一瞬、失礼しますね』


「! うわ…」




手の甲に軽く口付け、続けてこっちに来たと思ったらそのまま抱きかかえられる。“お姫様抱っこ”は初めてではないものの、突然だったので驚いた。
当然、周りの人の視線を集める。控えめだが歓声も聞こえた。見た目はこれでも沙月はちゃんと女性なので、僕を横抱きにできるのは単純にすごい。

「いきますよー」とカメラを向けたスタッフに呼ばれたので、沙月の首にしがみついたまま顔だけをそちらへ向けた。








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