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『規模も凄いし確かに綺麗だけど、アンタの趣味ではないわよね。蘭ちゃん達に何か言われた?』


「…当たり。さすがにお前の目は誤魔化せないな……そんなに僕、こういうの似合わないか?」


『“安室”は知らないけど、少なくともアンタは興味なさそうに見えるわね』


「アハハ、否定できないな……こういうの見ても、LEDがたくさん光ってるとしか思えなくて」


『夢のない表現ね……』




「予想はしてたけど」と沙月が溜息を吐く。その“予想”は普段「降谷零」を見ているからこそ出てくるもので、それ以外の人間からはきっと出てこない。
クリスマスのイルミネーションに連れて行った僕に「興味なさそう」と吐く女の子なんて、他に誰がいるだろうか。

そしてそんな興味のないイルミネーションにわざわざリスクを冒してまで誘ってきた僕に対して、何か特別な理由があるんじゃないかと。
多分こいつはそこまで考えてくれていたんだなと、先程容易く見抜かれた僕の上っ面の部分を思い出しながら直接聞かれていない質問に答える。




「こういうのがカップルの定番って聞くし、実際それっぽい雰囲気で行ったこともあるんだけど、未だにいまいちピンと来てなくて。
お前と来れば何か分かるかもって思って、けしかけられるままにここまで来ちゃったんだよな。お前がOKくれるかは賭けだったけど…」


『ふーん…。で、何か分かった?』


「…何となくは、うん。分かった気がする……かな」




すぐ横に居たそいつと目が合う。

例えとして一番近いのは“誰かと一緒に食べる食事は美味しい”ってやつだと思う。
一人で食べるよりも友人と食べる方が、同じものを食べたとしても美味しく感じる。それと似たような感じで。
一人で見て回っても、恋愛ごっこをしていた女の子と見て回っても特に楽しいと感じなかったものが、沙月と見て回ることで何だか違うものに見える。頭では人工的な光だと分かっていても、どこか幻想的で素敵な空間に思えてくる。
この不思議な感覚はこいつとだから味わえるんだろうな、というのは今回の経験で何となく分かった。世のカップル達がこの感覚を求めてイルミネーションを見に来たいと言っているのなら、今ならその気持ちが少しだけ分かるかもしれない。

キラキラした空間の中で、まるで世界に二人きりになったみたいなこの浮ついた気持ちを、大好きな相手と共有したいのだろう。




「手が繋げたら、もっとちゃんと分かったかもしれないのにな?」


『…さすがにそこまではちょっと……』


「僕らが二人でここにいるだけで十分まずい気がするけど。お前の基準、たまによく分からないんだよな…」


『随分珍しい類のお誘いだったから、許されるギリギリを攻めたつもり。いざとなったらどうにかしてくれるでしょう?』


「それはもう、ありとあらゆる言い訳を全力で並べるけどさ。…お前がそこまで甘やかしてくれるつもりなら、腕取るくらいはやってもいい?」


『まあ、それくらいなら何とか…』




誤魔化せなくはない、と言っている間に沙月の腕を取る。僕からじゃれつくのはよくあることだし、彼女の言う通りもし誰かに見られても何とかなるだろう。逆だったら相当怪しまれるだろうけど。
ぐっと近付いた距離に鼓動が高鳴る。これで少しは、“普通”のカップルに近付けただろうか。


いつになるかは分からないけど、堂々と手を繋げるような関係になったらまた来たいな。
そう呟きながらぴったり隣を陣取る僕に「歩きづらい」と文句を垂れながらも、沙月は「また来れるといいわね」と言って笑ってくれた。








(君と見る景色は、不思議と輝いて見える)




END.





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