Short Story





ヒーロー”デク”

※未来

「本当に、行くんだね…」
いつもより低いトーンでそう言えば出久は困ったように笑いながら頷いた。本当は、ここで「気をつけてね」とか、そういう言葉をかけるべきなのだろう。分かってはいるけれど、気が付けばそう口走っていたのだ。

緑谷出久は雄英高校を出て立派なプロヒーローとなった。今やデク、ショート、爆心地なんかは必ずといっていいほどニュースに載っている。それほど、誇れるヒーローになったということ。

一方で、ヒーローになったからには危険な仕事も増える。出久も家にいるよりも活動時間のほうが長い。私としては、念願のヒーローになって精いっぱい活動する彼を見るのは好きだし応援もしたい。それでも、やはり危険なことには足を突っ込んでほしくないという自分勝手な気持ちも少なからずあるのだ。

「頑張ってきてね」と言いだそうにも、うまく口が回らずに玄関で静寂が訪れる。一度小さく息を吐いてから無理やり笑顔を作って「いってらっしゃい」と頑張って口に出す。

出久も私の心境に気付いているのかいつもより厳しい顔つきだ。だめだよ、ヒーローがそんな顔しちゃ。ああ、こんな顔にさせているのは私のせいか。

「ごめんね」と私が言う前に出久が言った。

「いつも、不安にさせてるっていうのは分かってるんだ。でも、何があっても僕は必ずここに帰ってくるから」
「…ううん、私も、応援してるから。だから、ちゃんと敵をやっつけてね。あと無理だけはしないで」
「うん、なるべく早く帰るから!」